男性は“おごらなければいけない”のか


「デートはおごらないといけない」
 
こんな風に考えたことがある男性は多いのではないだろうか。以前、筆者は取材で「付き合う前の割り勘事情」について調査した。
 
デート代については「全額おごる」「自分が多く出す」という男性の意見が多かった一方で、女性で「全額おごる」「自分が多く出す」と回答した人は0。
 
一般的に、男性の方が女性より年収が高い傾向にあり、 “デートは男性がおごる”という風潮が根強く残っていることを実感する結果となった。しかし、30歳の男性・友介さん(市役所勤務)はこの風潮が男性の生きづらさを助長させているという。
 
「しっかりしたプランを立てようと思うと、1回のデートで数万円は飛ぶ。それで、付き合えたらいいけど、惨敗が続くと虚しさが募る」
 
友介さんは、現在マッチングアプリで婚活中だ。好きな女性ができると、映画や美術館デートを楽しんだ後、高級レストランで食事をするのだという。
 
「自分から誘っておいて、『はい、割り勘ね』とは言えない。2度目のデートで半額出してもらおうと思ったときもあったけど、あからさまに嫌な顔をされた。それからは、割り勘を提案すると、相手の気持ちが冷めてしまうのではないか……とか考えてしまって」
 
友介さんに「おごると決めているなら、もう少しカジュアルなデートにしたらいいのでは?」と提案してみると「今どきの女性は、みんなバチェラー(『バチェラー・ジャパン』/Amazonプライム・ビデオ)を見てるし、デートのハードルが上がっているのでは? と思ってしまう」と言っていた。
 

女性の部下を飲み会に誘えない

「女性の部下を飲み会に誘いにくいんだよね」
 
こう話すのは、49歳の和人さん(出版社勤務)だ。
 
「昔は、仕事終わりに男女関係なく、後輩を連れて飲みに行っていた。飲む中で仕事の話が弾むこともあったし、重要な時間だった。でも今は、女性の部下に『飲みに行こう』と声をかけることが、強制だと思われないか……最悪セクハラで訴えられてしまうのでは……なんて考えてしまう」
 
和人さんは、数年前から、部下を気軽に誘えなくなったという。さらにコロナ禍が“誘いづらさ”を後押しした。
 
「半期に一回、会社から懇親会費が出る。部内の交流を深めようという名目だが、“コロナなので、会費で好きなものを買って、自宅でゆっくり楽しんでください”という使い方に切り替える部長も多い。部下と仕事以外で接する機会は0に近い。寂しい反面、ニュースを見ても、時代が変わったのかなという印象」
 
和人さんは、テレビで “飲み会不要説”を唱える若者たちを特集した番組を見たのだという。先ほど紹介した友介さんも和人さんも、メディアの影響をかなり受けている様子だ。
 

「デートでお金を多く負担」「女性をリードすべき」という風潮

2人のように男性であることの“生きづらさ”を感じている人は多い。
 
一般社団法人「Lean In Tokyo」が2019年の10月に実施した調査(対象309人・オンライン上でのアンケート調査)によると、「生きづらさ」や「不便さ」を感じることについて、20代・30代男性の1位は「デートで男性がお金を多く負担したり女性をリードすべきという風潮」だった。
 
友介さんのように、性格面や振る舞いに関するバイアスに“生きづらさ”を抱えている男性が多いことがうかがえる。
 
一方、40代・50代になると「男性は定年までフルタイムで正社員で働くべきという考え」という項目がトップに。キャリアに関するバイアスが上がる。
 
この世代の多くの男性が家庭を持っており「一家の大黒柱=男性」働き続けなければいけない……という風潮が重くのしかかっているようだ。
 

女性にしたら「セクハラ」なのに、男性だったら「笑いのネタ」に

6年前、学生だった筆者が遭遇したこんな出来事を思い出した。
 
「このままじゃお前、一生童貞だぞ!」
 
アルバイト先の会社の飲み会で、1度も彼女ができたことがないという洋二さん(仮名・当時大学3年生)に対して、社員の高橋さん(仮名・当時40代後半)が冗談交じりに言い放った。
 
「えっ!? 洋二君、彼女できたことないの?」
 
女性陣からは驚きの声が上がった。洋二さんは最初、髙橋さんの言葉に「彼女欲しいっすね~」とうまくかわしていたが、次第に高橋さんは、周りの女性たちに「洋二はなんで彼女ができないんだと思う?」と意見を求め始めたのだ。
 
「洋二は男らしくないし、ひょろひょろしてるから?」「ん~顔?」「お金があればモテる!」
 
お酒の入った女性陣からは、痛烈な意見が飛んだが、洋二さんは「まじか!」「辛いわ~」と大げさなリアクションで笑いを取っていた。彼は、いわゆる“いじられキャラ”だったのだ。
 
その飲み会に参加していたのは、男女含め10人ほど。女性の中には、少し引いた様子でお酒を飲む者もいたが、ほとんどが高橋さんと一緒になって洋二さんをいじっていた。洋二さんは終始笑っていて、嫌がっているようには見えなかった。しかし、2カ月後、洋二さんは突然アルバイトを辞めたのだ。
 
後に、人づてに「洋二は、髙橋さんに対してかなり不満を持っていた」と聞いたが、それが高橋さんに伝わることはなかった。
 
近年、セクハラ対策として、コンプライアンス窓口などの制度が整いつつある。しかしこのような制度を利用するのは女性が大半だ。

20代男性の“生きづらさ”の2位は「男性が弱音を吐いたり、悩みを打ち明けることは恥ずかしいという考え」。
 
どれだけいじられても、笑われても、常に笑顔を絶やさなかった洋二君だが、男性であるがゆえの“生きづらさ”を感じていたのかもしれない。


※回答者のコメントは原文ママ


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