デートや婚活、結婚式……恋愛や結婚にはお金がかかる。特に現代社会においては、働き方や生き方の多様化が進み、恋愛とお金に対する価値観も変容している。本連載では、これからの「恋愛とお金」について、アラサーの恋愛ライター・毒島サチコが取材をもとに考察。第7回は「ナイトワークで副業をするアラサーOL」について紹介する(第6回はこちら)。
昼はOL、夜は“ナイトワーク”で働くアラサー独身女性のリアル
- 美香さん(仮名・29歳) 年収470万円 事務職
- 祐輔さん(仮名・29歳) 年収250~300万円 フリーランス
付き合って5カ月になる美香さんと祐輔さん。美香さんは祐輔さんに“ある隠し事”をしている。
「実は3年前からOLをしながら、週2でキャバクラに勤務しています(祐輔は知りません)。年収のうち120万円はキャバクラに勤務して稼いだお金です」
美香さんの会社員としての年収は、約350万円。それに加えて、週2回(20~24時)六本木のキャバクラに勤務しているのだという。
「今は、池尻大橋の1K、家賃8万5000円のマンションで1人暮らしをしています。会社の給料だけでもやりくりすれば、生活に困ることはないのですが、ぜいたくはできない」
副業のキャバクラでの稼ぎは毎月10万円ほど。それがちょうど家賃と光熱費などの固定費代になるのだという。
「固定費をキャバクラで稼ぐイメージですかね。会社の給料がまるまる手元に入ってくる感じ。月に5万円は貯金に回して、あとはある程度自由に使えるようにしています。美容代とか外食代も我慢しないで楽しめるくらいです」
「玉のこし婚」は20代前半で諦め、Wワークしながら資格取得の準備も
もともと美香さんは学生時代に、ナイトワークを半年ほど経験したことがあるそうだ。そのつてを使って、週2回勤務OKの会員制のキャバクラで働いている。「時給は、固定で1時間3500円です。私の働いているお店は私のように昼の仕事や学業と掛け持ちをしている子が多く、短時間で稼げる。お店も“素人”売りなんです」
美香さんは、ナチュラルメイクが似合うスタイルの良い女性。世間一般の想像するキャバ嬢のイメージはない。
「終電には『上がっていいよ』と言ってもらえるので、同伴もアフターもすることは基本ないですね。祐輔には『仕事が忙しくて~』『飲み会で』って今は言ってますけど……。この先もごまかし続けられるかは不安」
そもそも、美香さんが2年前からキャバクラで働きだしたのには理由がある。
「会社の給料の手取りは、20万円ちょっと。家賃を払って、服を買ったり飲みに行ったりすれば、それだけで毎月カツカツで、貯金は難しかった。でも貯金0では何かあったときに怖いし、30歳までにキャリアコンサルタントの資格を取るためのお金も貯めたかったんです。
あと、リアルな話をすると、彼氏の祐輔は昨年フリーランスの編集・ライターとして独立したばかりなんです。結構無計画な独立だったので、私が把握している感じで多分年収は300万いくかいかないかくらい。貯金もないと思います(笑)。祐輔は、現在三軒茶屋のアパートで1人暮らしをしていて、来年あたり同棲しようかって話も出ている。さすがに同棲後もキャバクラでは働けないので、今貯金しとこうって感じです。もちろん、家賃は折半で!
いつかは結婚も……って思うけど、玉のこし婚とか夢見るのは20代前半に諦めて、現実的なことばかり考えています(笑)。キャリアコンサルタントの資格を取ったら、転職するつもりです。資格手当もつくし、年収も増えるし」
お客さんに言われた「田舎に帰ったほうがいい」
ちなみに美香さんは鹿児島県出身。祐輔さんは秋田県出身だ。お互い大学進学と共に地方から上京し、今に至る。2人とも地元に帰る予定はない。「キャバクラのお客さんに『会社員と掛け持ちしてるんです』って言うと、なんかめっちゃ同情されるんですよ。『田舎に帰ってゆっくりしたほうがいいんじゃない?』って余計なアドバイスしてくる人とか、まれに『俺の愛人になってみる?』ってパパ活を持ちかけてくる人もいる。
お客さんの層は40~50代の人が多いんですけど、その人たちから見ると私って“苦労人”とか“かわいそうな子”に見えるのかなって。働いている本当の理由はもっと前向きなのに」
「高望みする女性」と「現実的な女性」。アラサーの女性2極化現象
美香さんは、自身の恋愛や結婚に対して、かなり現実的に金銭を工面しているように思える。彼女は祐輔さんに対し「金銭面は期待していない」と言い切った。しかし一方で、結婚相手に経済力を求める女性も多い。
恋活・婚活の総合メディア「M2W」を運営するWooが、2022年6月に独身女性200人を対象に実施した「結婚相手に求める年収」の調査によると、結婚相手には「500万円以上~600万円未満」(50人)の年収を求めるという回答が最多となった。さらに「気にしない」(41人)、次いで「400万円以上~500万円未満」「600万円以上~700万円未満」(40人)が続いた。
美香さんのように、共働きを前提に「相手の年収は気にしない」という独身女性が多いが、それに並んで「600万以上~700万未満」の年収を求めている独身女性がいることが分かる。
しかし、この「600万以上~700万未満」の年収を結婚相手に求めるのは“高望み”のようだ
国税庁が発表した「令和2年分 民間給与実態統計調査」よると、日本の1人当たりの平均年収は433万円 (男性532万円、女性293万円)。600万円以上の年収がある男性は、わずか9.2%だ。さらにこの調査の平均年齢は46.8歳で平均勤続年数は12.4 年。
結婚を考えるボリュームゾーンのアラサー世代の女性と年齢が近い男性で、年収600万円以上稼ぎ、かつ未婚である……そんな男性と出会う確率は多くない。
美香さんは、自身の結婚観についてこう語る。
「自分1人でも生きていけるけど、一緒にいたらもっと人生が楽しくなりそうって思える人と結婚したい」
将来を見据えて副業を続ける彼女の価値観は、令和の結婚事情を反映しているようにも思えた。
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