デートや婚活、結婚式……恋愛や結婚にはお金がかかる。特に現代社会においては、働き方や生き方の多様化が進み、恋愛とお金に対する価値観も変容している。本連載では、これからの「恋愛とお金」について、アラサーの恋愛ライター・毒島サチコが取材をもとに考察。第8回は「初デートサイゼ論争」について紹介する(第7回はこちら)。
SNSで勃発した「サイゼリヤでデート」論争とは?
2022年2月、Twitterに投稿された「サイゼで喜ぶ彼女」というイラスト。そこには、幸せそうにほほ笑みながら、サイゼリヤのミラノ風ドリアとエスカルゴのオーブン焼きを食べている女性が描かれている。同ツイートは、8月時点で14.7万以上のいいねを獲得し、今なお人気を博している。しかし、この投稿に対し一部のTwitter民から「デートでサイゼリヤに連れて行くなんてありえない」との意見が上がり、その批判に対して「サイゼリヤに失礼」など、“批判を批判”する声が出るなどの論争が勃発。未だに議論が続いている。
初デートでサイゼリヤ、「あり」か「なし」は相手による。しかし……
「サイゼリヤでデート論争」。ここで改めて、SNSでの「あり派」「なし派」双方の意見を振り返ってみる。デートでサイゼリヤは「なし派」の意見として、男女ともに最も多かったのは、サイゼリヤの料理の価格がお手頃なことを理由に「サイゼリヤ=安い=安上がりなデート」という印象を感じるという声だ。
一方、「あり派」で多く見られたのは、値段に関わらず純粋に「サイゼはいいお店だし、おいしい」という意見。そしてもう1つは「安いお店に連れていくことで金目当ての女性を排除できる」という男性の意見だ。この投稿が“初デートサイゼ論争”を巻き起こした(元ツイートはすでに削除済み)。
「ねぇ、初デートでサイゼリヤってどう思う?」
筆者はこの問題の検証にあたって、5人の女性に意見を求めた。すると、5人中3人が「相手によるんじゃない?」と回答。ちなみに前述のイラストを投稿したイラストレーターも「初手サイゼが許されるかどうかは2人の年齢とか距離感とか空気によって左右されますよって全員にリプしたい」と語っている。
「”安くても楽しめる女性かどうか“試されてるような気もする」
一方、どんな関係値であれ、「サイゼでデートはありえない」と語るのは、佐知さん(仮名・29歳)だ。「2年前、山根くん(仮名・29歳)と、2人きりで食事に行くことになったんです。彼のほうから『めっちゃおすすめのお店があるんだよね!』と言われて。でも当日、『池袋駅集合ね!』と言われてびっくりしました。だって、私の職場からも自宅からも池袋駅までは1時間以上かかる。こっちの都合を聞かずに、勝手に場所を指定されたことにモヤっとして……。それでも『おすすめのお店』だから、どんなところに連れてってくれるんだろうとおしゃれして出かけたら、『おすすめのお店』は安いチェーン居酒屋だった。料理はおいしかったけど、私の嫌いなカキが名物で。少し酔った山根くんは『俺、こういうお店に気軽に来れる子が好きなんだよね』と言っていました」
佐知さんと山根さんの間でデート前に、事前に「どこが都合いい?」「何食べたい?」などの会話はなかったようだ。「サイゼデートはしたことがないけれど……」と前置きしたうえで、佐知さんはこう語る。
「山根くんとサイゼデート『あり派』の男性って同じ心理なんじゃないかと思う。自分がおいしいと思うから、サイゼリヤや安くておいしい居酒屋デートは『あり』。そこに、相手の気持ちは関係ない。たしかに連れて行ってもらった居酒屋はおいしかったし、ネットの口コミを見ても評判のいいお店のようでした。でも、私はカキが苦手だったし、白のワンピースを着ておしゃれをしていたので、事前に聞いてほしかった。それに、”安くても楽しめる女性かどうか“試されてるような気もするし、私ってこの程度なのかなあと思ってしまった」
サイゼリヤはおいしい。だが「あり派」に相手への“思いやり”はあるのか
「あり派」で多く見られた意見は、値段に関わらず純粋に「サイゼリヤはいいお店だし、おいしい」という意見だ。実際に、サイゼリヤは代表的な外食チェーンであり、品質に関しても評価が高い。しかし、デートに選ぶレストランとして、賛否が分かれる場所であるのは事実だ。それは、山根さんが佐知さんを誘った「安くておいしい居酒屋」も同様。だからこそ事前のすり合わせが必要になるが、山根さんのケースのように、自分が『おすすめのお店』だから、という理由で相手の意見を聞かないのは思いやりに欠ける。
では、事前に「サイゼに行かない?」と言っておけばいいのか、というとそうでもないらしい。
「あり派」で多く見られたもう1つの意見は「安いお店に連れていくことで金目当ての女性を排除できる」というものだった。国内のサイゼリヤの客単価は770円(2022年8月期第2四半期決算)で、平均的なデート代よりも安い。
しかし、佐知さんは「これだけサイゼ論争が巻き起こっている中で、サイゼに誘うこと自体、自分が “試されている”」と思い、嫌悪感を抱くと語っていた。たしかに「相手を試す」という時点で、相手への思いやりも欠けているし、デートの主導権は男性が握っていて、“男性がおごる”という定説が含まれている。
一連の論争について「どう思う?」と問いかけてみるのも1つの手
ちなみに筆者は、赤ちょうちん系の居酒屋が大好きで、その中でも特にホッピーが好きである。とある男性にその話をしたところ「それは、プリン体ゼロだから?」と聞かれたので、「NO。安くておいしいから」と答えると、「ホッピー安くておいしいよね。飲みに行こうか」と言われた。その後、安くておいしいと有名な居酒屋に行ったのだが、自分がぞんざいに扱われているとか、試されているとか、そんなことは一切感じなかった。事前の会話の中で、相手も自分もそういうお店が好きだと分かっていたからだ。
安居酒屋やサイゼリヤに誘われて「えーやだ! もっとおしゃれなところがいい!」という人もいるかもしれないし、それが言えなくて「やだ、私って安い女だと思われてる……?」なんて悩む人もいるかもしれない。だけどそれはお互い話してみて初めて分かることだ。恋愛は、相手と自分との価値観のすり合わせの連続なのだから。
ここまで有名になってしまったサイゼ論争。初デートにサイゼに誘うのはリスキーかもしれないが、「ねぇ、“サイゼ論争”どう思う?」と、気になる異性に問いかけてみるのも、相手の価値観を知るきっかけになるかもしれない。
※回答者のコメントは原文ママです
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