スーパーに並ぶパックの「たまご」や、居酒屋の「たまご焼き」、はたまた恐竜の「たまご」など、漢字で記す場合「卵」と「玉子」どちらが正しいのでしょうか?
今回は「卵」と「玉子」の違いを正しい使い方とともに解説していきます。
<目次>
・「卵」と「玉子」の違いと意味、使い分けは?
・火を通したら「玉子」になる?
・「卵」の意味と使い方・例文
・「玉子」の意味と使い方・例文
・迷ったときは「卵」が基本
「卵」と「玉子」の違いと意味、使い分けは?
『広辞苑 第七版』(岩波書店)で「卵」について調べると、意味が次のように記載されています。
(1)鳥・魚・虫などの雌が産む、殻や膜に包まれた胚や栄養分。
(2)特に、食用にする鶏のたまご。けいらん。
◇「玉子」は、鶏卵を使った料理、あるいは料理用鶏卵の場合に限って用いるのが普通。
さまざまな生き物のたまごは広く「卵」と表記しますが、このうち、特に食材としての鶏のたまごを指す場合には「玉子」の表記を使う場合もあるということです。
「玉子」を用いるのは食用の場合ですから、鶏のたまごであっても、「学校で飼っている鶏が玉子を産んだ」とするのは誤っていると言えます。
火を通したら「玉子」になる?
食用の鶏卵については「玉子」と表記することもあると述べましたが、さらに、食用の中でも生のものは「卵」、調理・加熱されたものは「玉子」とするのではないかという考えもあります。
NHK放送文化研究所が2007年に掲載した記事によると、「生たまご・たまご焼き」を漢字でどう書くかアンケートを取ったところ、「生卵・玉子焼き」というように使い分けると答えた人が55%と最も多かったそうです。
とはいえ、これはあくまで「そんな傾向がある」という話で、生なら「卵」、火を通したら「玉子」としなければならない、というほど厳密なものではないと思います。
実際、スーパーのたまご売り場に行ってみると、確認した計12種類のたまごのうち、「たまご」の表記が6種類、「卵」が5種類、「玉子」が1種類と、「玉子」という表記を使っている商品もありました。
生たまごであっても「玉子」が全く使われていないというわけではなさそうです。
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「卵」の意味と使い方・例文
・「卵」には「修行中の人」を表す意味も
「卵」には、生き物のたまごを指す以外にもさまざまな意味があります。
まだ一人前にならない人。修行中の人。
物事の起こりはじめ。未成熟なもの。(『大辞泉 第二版』小学館)
未熟なものや発達の途上にあるものを、生き物が生まれる前の段階であるたまごに見立てた表現ですが、これらの意味では「玉子」という表記は使いません。
以上も踏まえて、「卵」を使うときの例文を以下に示します。
・「卵」の例文・使い方
生き物のたまご・鶏のたまご
- イクラはサケやマスの卵を塩漬けにしたものです。
- ウミガメの卵を守るために、砂浜をボランティアがパトロールしています。
- 鳥と同じように卵を温める恐竜がいたことが分かってきました。
- スーパーの特売日に卵を安く買いました。
まだ1人前にならない人・修行中の人
- 医学部に進学した彼は、医者の卵として研鑽を積んでいます。
- 彼は役者の卵で、日々、劇団で稽古を重ねています。
- 彼女は、将来有望な数学者の卵です。
物事の起こりはじめ・未成熟なもの
- 台風の卵が発生しました。
- 来月のプレゼンに向けて、企画の卵を作っています。
「玉子」の意味と使い方・例文
・「玉子」の意味
繰り返しになりますが、「玉子」と表記する場合は食材としての鶏卵を指し、特に、料理名など調理されたものに関して「玉子」と書くことが多いようです。・「玉子」の例文・使い方
- 朝は玉子焼きとみそ汁、納豆が定番です。
- ラーメンのトッピングには味付け玉子が欠かせません。
- 鶏が入っているのが親子丼、入っていないのが玉子丼です。
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迷ったときは「卵」が基本
ここまで述べてきた通り、「玉子」という表記を使うのは食べ物としての鶏のたまごを指す場合です。一方で「卵」という表記は、鶏を含めてさまざまな生き物のたまごや、比喩的な意味でのたまごなど広く使うことができます。
「たまご」を漢字で表記する際、迷った時は「卵」と書いておけば、ほぼ間違いないでしょう。
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