子育てSNS界隈が凍りついた
出版界は第2、第3のサイバラを探した。新しい人材は、自分の時間に制限があるために断片的な発信しかできない、子育て中の母親たちと親和性の高いSNSであるTwitterの中から生まれることが多かった。「面白おかしい子どもとのやりとり」「子どもの笑える発言」といった無邪気な投稿の数々からアマチュアの漫画家やライターがスカウトされ、出版に至る。プライバシーに疑問の残るものも数多くあったが、SNSでの面白おかしい子育て投稿の延長線上にバズや作家デビューの可能性を見た「子育てアカウント」は、男女の出産育児を奨励する時代背景も手伝って、加熱した。子育ては、SNS上での一大ジャンルとなったのである。
だから「ぴよ美」ちゃんの告発がネット上で騒がれた途端、子育てアカウントが一斉に沈黙した。
始まる批判。「SNSで呑気に子どものプライバシー晒す親たちって毒親」「自分の承認欲求のために子ども晒していいね稼いで」「おむつ姿や失敗や言い間違えが可愛いって笑うけれど、それを見知らぬ人々に晒された子どもが同じように感じるとは限らない」「ネットではいろんな危険だって生じる。親としての自覚あるの?」。
そして反省。「今まで自分がしてきたことが、子どもを傷つける可能性なんて考えたこともなかった」「無意識のうちに、自分が毒親になってた」「もう自分の子どものこと書くのやめよう」「投稿控えます」。写真や投稿が消されたり、アカウントが公開から非公開(鍵垢)へ変更されたり。今回の件は、2000年代以降の、実に日本らしくのどかだった匿名SNS子育てカルチャーに走った激震であるといえる。
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