「春の天気」は油断禁物
さくらの花が一斉に開き街がピンク色に包まれる春は、外を歩いているだけでワクワクする季節です。一方で春の天気や気温は日ごとの変化が大きく、油断できません。そんな変わりやすい春の空模様を表す美しい言葉はたくさんあります。そこで今回は、気象予報士である筆者が天気予報でもよく使われる言葉を紹介します。
1. 花曇り
たとえば、さくらが見ごろを迎える時期に雲が広がり、ぼんやりとした空模様になることを「花曇り」といいます。春は高気圧と低気圧が短い周期で日本付近を通過するため、晴れの天気が長続きせず、「春に三日の晴れなし」といわれます。青空に映えるさくらの写真を撮影するには、天気予報をこまめに確認してチャンスを狙いましょう。
2. 花冷え
また、さくらシーズンに注意したいのが急激な気温の変化です。寒い冬が終わり、満開のさくらの下、ようやくポカポカ陽気が続くようになったと思いきや、突然やってくる寒さが「花冷え」です。さくらが見ごろを迎える3~4月にかけては、冬の冷たい空気と春の暖かい空気が日本付近でせめぎ合いを起こしています。
2020年3月29日には、東京で満開のさくらに雪が積もりました。本州の南岸を低気圧が接近し、そこへ冬の冷たい空気が流れ込んだため、東京都心でも雨が雪へと変わり、1センチの積雪を観測しました。都心で3月下旬以降に1センチ以上の積雪を観測したのは、1988年4月8日以来32年ぶりのことでした。
3. 桜吹雪
このほか、さくらの花びらが風に舞い散る様子を「桜吹雪(さくらふぶき)」、川などの水面(みなも)に散った花びらが浮かぶ様子を舟に見立てた「花筏(はないかだ)」と表現した風流な言葉もあります。例年この季節は高気圧に覆われて穏やかに晴れる日を「お花見日和」や「行楽日和」と伝えることが多いですが、新型コロナウイルスの流行が始まってからは、以前と比べて、こうした言葉はあまり使われなくなりました。早く誰もが自由に気兼ねなく外に出て、自然の風景を楽しめる日々が戻ることを願っています。
4. 春一番
うららかなイメージとは裏腹に春は風の強い季節です。春を代表する強風といえば「春一番」です。
春一番とは、春の訪れを告げる南寄りの強い風のことで、気象庁の観測に基づき発表されます。九州から関東甲信越、北陸までの各地で発表されますが、発表の条件は地域によって少し差があります。関東地方では、日本海の低気圧に向かって、最大風速8m以上の南よりの風が吹き、前日より気温が上昇したときに発表されます。
のどかな語感とは違って、春一番は危険な風です。江戸時代に、長崎県・壱岐の漁師たちが春の突風にあおられて遭難したことから、春の強風を「はるいち」とよんで恐れたことが春一番の由来だといわれています。現代でも、春一番のような強い風によって工事現場の足場が崩れたり、看板などが飛ばされたりする事故が毎年のように発生しています。春一番の発表される期間は立春から春分の日までと決まっていて、2022年は北陸、東海、関東、九州南部・奄美地方のみの発表でした。
ちなみに、東北と北海道では春一番の発表はありませんが、「雨一番」という言葉があります。雪深い北日本にとって、暖かくなり降るものが雪から雨に変わることが春を告げるサインなのです。
5. メイストーム
春一番のほかにも、春は強い風や雨を伴う低気圧が度々近づき、嵐となります。24時間以内に中心気圧が24hPa以上下がる「爆弾低気圧(※気象庁では「急速に発達する低気圧」とすることが多い)」や主に5月ごろに嵐をもたらす「メイストーム」によって、大雨や暴風のほか、落雷、竜巻などの突風やひょうが発生し、大荒れの天気となる恐れがあります。鉄道や飛行機などのダイヤを大きく乱すため、移動の際は十分注意しましょう。
春に注意したい「5つのK」
天気や気温の急激な変化に強い風や雨をもたらす嵐、春は注意が必要なことがたくさんありますが、春に気を付けたい気象現象をまとめて「春の5K」と呼ぶことがあります。春の5Kとは、頭文字が「K」の強風、黄砂、花粉、乾燥、寒暖差(気温の変化)のことです。その日の気象条件に合わせて、5つのうち3つを選んで「春の3K」と呼ぶこともあります。天気や気温だけでなく環境も大きく変化することが多い春。体調を崩しやすい季節ですが、天気の言葉を知ることで事前に対策を取って、新年度を元気に過ごしましょう。
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