京都アニメーションが制作し、世界中で話題になったテレビアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』。幼い頃から感情を持たない軍人として生きてきた少女、ヴァイオレット・エヴァーガーデンが、終戦後、相手の想いをすくい上げて手紙を代筆する「自動手記人形」という仕事を通して"愛"を知るまでを描いた物語です。
アニメファンの間でも傑作と名高い本作。石立太一監督による完全監修の元でテレビシリーズを再構築した「金曜ロードショー特別編集版」が10月29日(金)に放送されると、ツイッター上では#ヴァイオレット・エヴァーガーデンが世界トレンド1位を獲得するなど盛り上がりを見せました。さらに今週11月5日(金)には、劇場公開された『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形―』が本編ノーカットで地上波初放送されます。
金曜ロードショーで、他局で放送されたアニメを再編集して放送するのは異例のこと。そこで今回は、金曜ロードショーのプロデューサーである北條伸樹さんに、放送の経緯や裏話をお聞きしました。
――金曜ロードショーで『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を放送することになった経緯やきっかけを教えてください
昨年、京都アニメーションさんの『聲の形』を放送した際に、窓口であるABCアニメーションさんから「ヴァイオレット・エヴァーガーデンの外伝を放送しませんか」とお話を頂いたことがきっかけです。
外伝も素晴らしい作品ですが、せっかく放送するのであれば、やっぱり本編を観てからの方がより楽しんでもらえると思い、京都アニメーションさんも含めてご相談した結果、テレビシリーズの特別編集版と2週連続で放送する形になりました。
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――『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、深夜アニメとして放送されていた作品ですが、金曜ロードショーの視聴者層とのズレはなかったのでしょうか
基本的に金曜ロードショーは、金曜の夜に在宅していることが多い子どもや20〜40代の女性を主なターゲットにした作品選びをしています。ただ、ヴァイオレット・エヴァーガーデンは、子どもから大人まで楽しんで頂ける作品だと思っています。
私も高校2年生の娘にぜひ観てほしくて、「これ観てね」とLINEを送りました。「?」という返事が届きましたが(笑)。ジブリなどに比べると一般的な認知度はまだまだ低いですが、観て頂ければ作品の良さがわかってもらえると思うので、自信をもって放送することを決めました。
――他局で放送されたアニメを再編集して、金曜ロードショーで放送するのは今回が初めての試みだと伺いました。実現のために社内で苦労されたことや、ハードルなどはありましたか
それは意外になかったですね。本当に良い作品なので、新しい試みとしてやってみようと。ただ、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」はアニメファンの間では有名ですが、一般的には名前すら知らないという方も多いのが現状です。そんな方たちにも観てもらえるように、しっかりと宣伝しようという話になりました。
著名人の推薦コメントや座談会などの取り組みに加えて、第1週用に『3分でわかるヴァイオレット・エヴァーガーデン』、第2週用には『外伝を観る前に』という6分の告知動画も作成しました。このためだけに金曜ロードのナレーターを務めるサッシャさんや朴璐美さんにナレーションをお願いして、石立監督にも監修して頂きました。
――告知の際に「泣けるアニメNO.1」という紹介をされています。その通りではありますが、泣けるからいい作品、というわけではないので、ちょっと複雑な気持ちもあるのですが、どのような想いでこのようなキャッチコピーにしたのでしょうか
ファンの方の中にはそういった声もあることは知っていますが、この作品を知らない方にまずは観てもらうために、あえてベタな「泣けるアニメ」という言葉を選びました。
劇中のヴァイオレットの言葉にも「人には届けたい想いがあるのです。届かなくてもいい手紙なんてないのですよ」というものがありますが、私たちとしても、ぜひ作品を観てほしいという想いを、多くの方に届けたい。そのために「泣けるアニメ」という言葉を使ったり、時間をかけて告知動画を作成しました。
知る人ぞ知る名作を、誰もが知る名作にしたい。ヴァイオレット・エヴァーガーデンが国民的なアニメになってほしいという想いで、やらせて頂いています。
――特別編集版は、全13話あるテレビシリーズが、2時間の放送枠に編集されていました。やっぱりファンとしては、前後編の2週に分けるとか、せめて3時間くらいにしてもらえたら嬉しかったのですが、難しいでしょうか
そうですよね。ただ今回は、そもそもが外伝を観て頂くための試みであるということ、そして作品を少しでも多くの方に観て頂きたいということで、いわば入門編のような形で特別編集版を放送することになりました。
――物語の序章にあたる第1話から第3話までと、名作と言われる第7話、第9話、そして神回と絶賛された第10話を中心に再構築したとのことですが、この構成はどのように決まったのでしょうか
先にこちらで第1話から第3話、第7話、第10話をベースに仮編集しました。この構成については京都アニメーションさんとも割と意見が一致していて、そこから石立監督に監修して頂くなかで、第9話の部分が足されて最終版になったという形です。
石立監督がとてもこだわりのある方なので、実はこの最終作業に2か月半くらいの時間をかけて頂いています。とても丁寧に、本当にオンエアぎりぎりまで作業して頂いたことで、想いのこもった「入門編」になっていると思います。
――石立監督からは、放送についての感想などはあったのでしょうか
先日、取材させて頂いた際に「金曜ロードショーを子どもの頃から観ていたので、自分の作品が流れるのは非常に嬉しいです」と言って頂きました。それを聞いて、私も嬉しかったです。
――北條さんご自身では、全13話の中でいちばんのお気に入りは何話ですか
ベタなんですけど、やっぱり第10話ですね。自分も娘がいるので(親子のエピソードを描いた第10話は)何回観ても泣けてしまいます。放送前にスタッフで完パケを観る試写があったんですが、やっぱりそこでも泣いてました(笑)
――ありがとうございます。今回、テレビシリーズの特別編集版と外伝が放送されるということで、それに続く劇場版(国内未配信)も金曜ロードショーで放送してくれたらなと思いました。その予定はありますか?
そうですよね。正直、劇場版のDVDが出たばかりなので、まだ放送予定とまではいけていませんが、その思いはもちろんあります。テレビシリーズの特別編集版、外伝ときたら、劇場版まで金曜ロードショーで完結させられたらと思っています。(後編につづく)
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