雨の日=湿度100パーセントではない?湿度0パーセントはありえる?「湿度」の疑問を気象予報士が解説

私たちの体感を大きく変える湿度。晴れの日は湿度が低く、雨やくもりの日は湿度が高いイメージがありますが、そもそも湿度100%や0%という状態はありえるのでしょうか? 秋から冬にかけて空気の乾燥に注意したい気象条件について気象予報士が解説します。

夏から秋へ、体感の変化は「湿度の違い」にあり

10月に入ってもまだ日中は気温の上がる日はありますが、吹き抜ける風に秋らしさを感じるようになってきました。同じくらいの気温でも夏と体感が変わる理由は、湿度の違いにあります。日本では、夏の晴天時は南の海上で育った太平洋高気圧に覆われるため、空気は湿気を多く含み、ムシムシとした不快な暑さになります。 
南から太平洋高気圧に覆われた日(2020年8月26日)
南から太平洋高気圧に覆われた日(2021年8月26日)
秋になると、太平洋高気圧の勢力は弱まり、大陸育ちの乾燥した空気を持つ移動性高気圧に覆われます。このため、カラッと晴れて湿度が下がり、気温の割に過ごしやすさを感じられるようになるのです。 
大陸からの移動性高気圧に覆われた日(2021年10月3日)
大陸からの移動性高気圧に覆われた日(2021年10月3日)
 

雨の日=湿度100パーセント?

天気予報で使われる湿度は「相対湿度」で、空気の乾き具合を数値で表しています。空気は気温が高いほど多くの水蒸気を含むことができ、逆に、気温が低くなるとあまり含めません。ある気温の空気が含むことのできる最大の水蒸気量を飽和水蒸気量といいます。相対湿度は、空気が飽和水蒸気量のうち、どれくらいの水蒸気を含んでいるか示す数値です。湿度100パーセントとは、空気中に飽和水蒸気量ちょうどの水蒸気が含まれている状態です。
 
私たちは感覚的に晴れのときは湿度が低く、くもりや雨のときは湿度が高いことを知っています。それでは、雨の日は必ず湿度100パーセントなのかというと、そうではありません。なぜなら、雨粒と雨粒の間の空気は必ずしも飽和水蒸気量に達しているわけではないためです。湿度100パーセントの状態にあるのはどこなのかというと、雨を降らせるもとになる雲の中です。このほか、霧の中も基本的には湿度100パーセントです。ちなみに、雲と霧は物理的には同じもので、空に浮かんでいるものを雲、地表付近のものを霧とよびます。 
コスモスが映える湿度の低い晴れの日
コスモスが映える、湿度の低い晴れの日
湿度の高いくもりの日
雨が降り出しそうな、湿度の高いくもりの日
 

「湿度0パーセント」ってありえるの?

では、湿度0パーセントはどんな状態なのでしょうか? そもそも湿度が0パーセントまで下がることはありえるのでしょうか? 砂漠のようにカラカラな状態のイメージが浮かびますが、実は日本国内でも湿度0パーセントを記録した日があります。

2005年4月9日、移動性高気圧に覆われて広い範囲で晴れたこの日、岐阜県高山市で最小湿度0パーセントを観測しました。朝から晴れて、日中に北西の風が吹いたことで極端に湿度が下がったと考えられます。日本海からの風が白山連峰を越えて「フェーン現象」が発生しました。湿潤な空気が山を越えて反対側に吹き下りるとき、風下側で吹く乾燥した高温の風を「フェーン」といいます。高山では、2009年4月7日にも北西の風が吹き、最小湿度1パーセントを記録しています。
 

「西高東低」の天気図は空気の乾燥に注意

秋から冬にかけて、太平洋側の地域は空気の乾燥が進む季節です。特に気を付けたいのは、大陸に高気圧、日本の東海上に低気圧が発生するいわゆる「冬型」「西高東低」の気圧配置になったときです。 
西高東低の気圧配置(2020年12月16日)
西高東低の気圧配置(2020年12月16日)
西高東低の気圧配置になると、大陸から日本列島に向かって、北寄りの冷たく乾いた季節風が吹きます。季節風が日本海を通るとき、乾いた空気に水蒸気が補給されて雨雲や雪雲が発達します。この雨雲や雪雲が日本海側の地域にたくさんの雨や雪を降らせます。すると、日本の中央を走る山を越えて、太平洋側へ吹き下りるときには、水分を失って乾燥した風になります。このため、関東など太平洋側の地域では、冬は空気が乾燥し、湿度が低くなるのです。冬は「乾燥注意報」が数日間にわたって発表されることもめずらしくありません。

乾燥注意報が発表される日は、火の取り扱いに注意するとともに、肌やのどのケアにも工夫が必要です。人が快適に過ごせる湿度は55%程度だといわれています。加湿器などを使って、適切な湿度を保つように心がけましょう。


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