恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」 第28回

小田急の新型ロマンスカー70000形「GSE」が発車!今後の展望は?

2018年3月17日、小田急電鉄は30年越しの大プロジェクトである複々線化工事完成に伴うダイヤ改正を行った。その目玉ともいうべき新型ロマンスカー70000形(GSE)が颯爽とデビュー。午前9時00分発「スーパーはこね5号」の発車に合わせて、新宿駅ホームで「発車式」を挙行した。

30年越しの大プロジェクト「複々線化工事完成」の象徴

2018年3月17日、小田急電鉄は30年越しの大プロジェクトである複々線化工事完成に伴うダイヤ改正を行った。その目玉ともいうべき新型ロマンスカー70000形(GSE)が颯爽とデビュー。午前9時00分発「スーパーはこね5号」の発車に合わせて、新宿駅ホームで「発車式」を挙行した。
 

新型ロマンスカーの姿を大勢の鉄道ファンらが見守った

テープカット
GSE出発式テープカット

まず、小田急電鉄の星野晃司社長が挨拶すると、真新しいローズバーミリオンのGSEが朝日を浴びながらゆっくりとホームに入ってきた。続いて、星野社長、GSEを設計した岡部憲明氏、小田急電鉄の内田克美新宿管区長の3人がテープカット。そして運転士、車掌、ロマンスカーアテンダントの3人に花束贈呈が行われると、ちょうど発車時刻である。

花束贈呈
乗務員への花束贈呈

新宿管区長が右手を高く挙げて出発指示動作を行うと、満員の乗客であふれるGSEは一路箱根湯本を目指してゆっくりとホームを離れていった。新型ロマンスカーの姿を一目見ようと集まった大勢の鉄道ファンや親子連れ、報道陣に見送られてGSEは華々しくデビューしたのである。

営業1番電車が発車!
営業一番電車が出発進行!

 

午前9時00分発の「スーパーはこね」は、ダイヤ改正前は小田原まで64分かかっていたのだが、ダイヤ改正により59分と1時間を切ることになった。これは複々線化の完成によるスピードアップ効果である。さらに箱根湯本までは11分短縮されて74分で到着する。
 

御殿場行き特急MSEは「ふじさん」に名称変更

また、GSEの直前、8時40分発の御殿場行き特急MSEは、長年親しまれた「あさぎり」の愛称から「ふじさん」に変更。こちらは新たな再出発となった。

ふじさん
MSEあさぎり改め「ふじさん」

 

「楽しさや余暇を求める時代にロマンスカーは貢献できる」

かくして、小田急電鉄の長年の夢だった複々線化工事は、この日のダイヤ改正で完成したことになる。
 

GSEの発車後、星野社長は報道陣の取材に応え、30年越しの大プロジェクトだった複々線化工事が終わったことについて「感無量の一言に尽きる」と語った。社員やOB、多くの関係者の思いが詰まった事業だったと振り返るとともに、これからがスタートであると気持ちを引き締めた。課題は、複々線化の完成により快適な時間や、空間をいかに提供できるかである。さらに沿線の再開発、活性化を行い、「日本一暮らしやすい沿線」をつくりあげたいと思いを語る。

小田急星野社長と岡部氏の記者会見

魅力ある沿線にするために、GSEをはじめとするロマンスカーは、そのための大きな武器となるのかとの問いには、その通りだと大きくうなずく。「ロマンスカーは、快適な移動かつ所要時間短縮に貢献できるとともに、『楽しさ』を提供したい」「沿線や国内各地からの利用者だけではなくインバウンドのお客様にも楽しんでいただきたい」、と「楽しさ」という言葉を強調する。
 

「これからは楽しさや余暇を求める時代になり、仕事とともに余暇を楽しむ時代である。ロマンスカーは、快適かつ優雅な良い時間を過ごすために充分貢献できると思う。働き方改革が言われる昨今、快適通勤として車内でゆったり過ごして、職場ではバリバリ働ける。そんな暮らし方にも貢献できるのではないか」とロマンスカーの効用を熱く語った。大プロジェクトを成し遂げた満足感とともに、これからのさらなる発展をめざす意気込みが感じられた。
 

「LSEなくしてGSEは生まれなかった」

新宿駅のGSEをPRする巨大ボード

GSEを設計した岡部憲明氏は、出発式でGSEを見送って「大変嬉しく思う」と話した。GSEはロマンスカー・ファミリーの一員として設計したので、白、青、につづいて赤いロマンスカーが加わったと満足そうに白いロマンスカーVSEから始まった設計の仕事を振り返る。
 

ロマンスカーは、観光とビジネスの両方に応える車両であるとともに、小田急沿線の風景をつくりあげてきたもののひとつである。これに赤いGSEが新たな風景として加わるわけで、「愛着を持つとともに、ぜひ、乗って楽しんでいただきたい」とも話す。
 

GSEはLSEの後継車両として誕生したのだが、LSEは、どんな存在だったのか?と聞かれると、「LSEは大きなひらかれた展望が特徴なので、その広がりを大事にして設計した。伝統に培われたものに新たなものを加えるとの思いから、ロマンスカー伝統の赤を受け継ぎ、やわらかい赤(ローズバーミリオン)をベースにした色を考えた」と苦心したことを明かした。LSEなくして今の車両は生まれなかったと、その存在感の大きさを認めている。
 

GSEと引退予定のLSE、今後はどうなる?

小田急はGSEをもう1編成増備する予定で、近々2編成体制となる。その結果、LSEの処遇が気になる鉄道ファンは多いだろう。最後に星野社長は、「LSEは引退するが、保存をしていきたいと考えている。敬意をこめて、引退というか、お別れの式を行い、思いを込めながら送りたい」と会見を締めくくった。

引退が決まった
引退が決まったLSE

複々線化が完了、GSEがデビューし新たな時代に入った小田急。今後のさらなる発展に期待したいと思う。
 

取材協力=小田急電鉄
 

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