職場や人付き合いで上から目線の一言をぶつけられ、「それは違う」と正論で返したのに、相手がますます勢いづいてしまう——。そんな経験はありませんか。
脳科学者・中野信子さんによれば、マウントをとりたい人が最も欲しがっているのは、こちらの「動揺」「焦り」「弁明」。論理的に反論しようと早口で喋り出した時点で、相手の術中にはまっているといいます。
では、正論が「無防備な隙」になる“野生のパワーゲーム”で、言葉で応戦せずに主導権を握るにはどうすればよいのでしょうか。中野さんの著書『ロンドン紳士と脳科学に学ぶ 品格のあるマウントのとり方』(日経BP)から一部抜粋し、正論で殴り返さず、「態度で勝つ」ための方法を紹介します。
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論理で考えたら負け、態度で勝っていく
論理で誠実にフェアに考えたら負けてしまう。どんなに正しいことを言っていても声の大きい人に勝てない。そんなとき、態度でマウントして勝っていく、主導権を握っていくにはどうすればいいのでしょうか?
これは、きれいごと抜きで、そういう「論理が通じない、あるいは論理をあえて無視してマウントをとりにくる野生のパワーゲーム」の場で主導権を握るためのハックです。
論理的な人ほど「正論を言えば伝わる」と信じて泥沼にハマりがちですが、態度の殴り合いにおいて正論はただの「無防備な隙」になります。この非対称な戦いで勝つための、非言語的・心理的な主導権の握り方をいくつか共有します。
すぐに言い返さず、「無」の表情で3秒見つめる
まずは、「反応のコスパ」を最悪にする、リアクション・コントロールを行うことです。
マウントをとりたい人間が最も欲しがっているのは、貴方の「動揺」「焦り」「弁明」です。論理的に反論しようと早口で喋り出した時点で、相手の術中にはまっています。
1. 「無」の表情で3秒間見つめる
相手が何かマウントを仕掛けてきたら、すぐ打ち返さずに、ただ無表情で相手の目をじっと見つめます。会話のテンポをあえて狂わせることで、相手に「あれ、滑ったか?」「何かまずいことを言ったか?」という予期せぬ不安(ノイズ)を植え付けられます。
2. 「へえ、そうなんですね」の一言で流す
感情の起伏を一切見せず、記号としてのあいづちだけで処理します。「貴方の攻撃は私に1ミリも届いていません」という態度そのものが、最大のカウンターになります。
相手の土俵に乗らず、「なぜ今?」を突く
さらに、土俵(アジェンダ)を勝手に変えましょう。
相手の論点に愚直に付き合う必要はありません。フェアな議論ではないのですから、こちらが主導権を握ってルールを変えることをあえて試みるのです。
そして「メタ視点」から相手を観察すること。相手の言葉の中身ではなく、「なぜ今、そんなことを言っているのか」という構造を指摘します。もちろんフェアではないからこそ、この攻撃は効くのです。
「そんなに熱くなって、ちょっとイタすぎません?」
「それ、今この場でわざわざ言う必要あります? 何か別の意図があると思われても仕方ないですよ」
憐れみのニュアンスを混ぜるのも重要です。怒るのではなく、「かわいそうな人を見る目」をほのかに香らせるのです。人間は、怒られるよりも「格下として心配される」「呆れられる」ほうが、プライドに深い傷を負います。



