無料に見えて高くつく「比較コスト」
誰かの投資成績、SNSで見かける華やかなお金の使い方、同世代の平均年収、「みんながやっている」という情報——それらを見た瞬間、私たちの頭の中では自動的にこんな処理が始まります。
「自分はこのままでいいのか」「もっとやるべきことがあるのではないか」「この選択は正しいのか」。
この思考には、一見するとお金も時間もかかっていないように見えます。しかし実際には、判断力を消耗し、自己決定感を削り、満足感を下げ、不安を増やすという、非常に高い心理的コストを私たちは支払っています。
これを「比較コスト」と呼ぶことにします。
「新NISA満額」「資産2000万」を見て焦った経験はありませんか?
例えば、こんな経験はないでしょうか。
・ママ友のインスタで「新NISA満額! 子どもの将来に備えてます」という投稿を見て、まだ始めていない自分に焦りを感じた
・同僚が「ふるさと納税、今年はもう10万円分やった」と話しているのを聞いて、自分は収入が少ないから5万円もできないことに悲しくなった
・SNSで「30代で資産2000万円達成」という投稿を見た直後、自分の通帳残高を開いて、ため息をついた
・YouTubeの投資チャンネルで「この銘柄を買わないのは損」と聞くたびに、今の自分のポートフォリオが間違っている気がしてくる
・タイムラインに流れてくる「家族で海外旅行」の写真を見て、うちはなぜ行けないのだろうと考え込んでしまった
どれも、画面を閉じれば遭遇しない情報です。SNS上では、成功が称賛され、結果がすべてのように語られ、「いいね」やフォロワーの多さが価値の指標とされがちです。
本来、人それぞれで違うはずの人生が、同じ物差しで測られているような錯覚が生まれてしまいます。この錯覚が「自分も何かしなければ」「このままでは置いていかれる」という焦燥感を生み、行動を急がせ、お金を動かそうとします。



