今回お話を聞いたのは、高校中退・高卒認定試験を経て、神戸大学に総合型選抜で現役合格した嶋崎まあやさんです。現在は大学に通いながら、総合型選抜に特化した塾「キャリナビ」を運営しています。
「カナダ留学」や「スポーツ強豪校」という一見華やかな経歴を持つ嶋崎さんですが、その実態は「学校の空気になじめず、うつっぽくなって居場所を失った」という、誰もが抱える地続きの挫折から始まっていました。
一見ネガティブに見える「レールを外れた経験」を、どうやって大学合格、そして未来への原動力に変えたのか。総合型選抜の本質である「自分の人生を言語化する力」についてお話を聞きました。
強豪校での挫折——「みんなと同じ」になじめず、心をすり減らした日々
「私は強豪校に入れば、1人の選手として競技を追求できると思っていました。しかし実際には、競技そのものよりも部の伝統や上下関係が重視される場面も多く、入学前に思い描いていた環境とのギャップを感じるようになりました。
監督やコーチが『これをやりなさい』と言えば、生徒は『はい、分かりました』と従う。練習メニューに対して、『なぜこれをするのか』と問い直す空気もありませんでした」
その環境に適応できる選手もいましたが、嶋崎さんにはどうしても「自分で考えることを放棄させられている」ように感じられて苦しかったそうです。周囲に合わせられない自分を責め、毎日義務感だけでスキー板を履く日々。全国大会を見に来た母親には、後に「あの頃のあなたはうつ状態だった」と言われたほど、精神的に追い詰められていきました。
その後、家族で何度も話し合い、嶋崎さんは高校1年の終わりに退学を決意します。外から見れば「強豪校からのドロップアウト」でした。
「当時の私は、いわば居場所を失った不登校生と同じです。『この先どうなってしまうんだろう』という強い不安しかありませんでした」
カナダで知った「自分で決めて、自分で責任を取る」という自由
ある日の練習で、現地の子がコーチに向かって「このトレーニングは何のためにやるんですか?」と普通に質問していました。日本では反抗的だと怒られかねない行為です。さらに驚いたのはコーチの返答だったといいます。
「『これはコーチ陣が考えた提案だ。でも、やるかやらないかを決めるのは君自身だよ。やる自由も、やらない自由もある。その代わり、結果の責任は自分で引き受けなさい』と言っていたんです。目からうろこが落ちました」
教育とは、大人が決めたルールに盲従させることではない。「自分で考え、選び、その結果を引き受ける経験」を積ませることなんだ——。この時、嶋崎さんが高校時代に抱いていたモヤモヤの正体が「自分で考えて選択させてもらえない苦しさ」だったのだと、初めて点と点がつながりました。それと同時に、自分の中に教育への関心が芽生えていったそうです。



