大学で突きつけられた「見えない階層」
「女子枠の合否の基準は学力だと知りました。私も出願していたら、合格していた可能性は大きかったと思います。その情報が一部のお金持ち学校の高校生のみに伝わっていて、公立高校の女子は知る余地がなかったのはおかしくないですか?」女子枠の学生たちの話を聞いていると、まるで「指定校推薦のようだ」とも感じるそうです。
「同じ私立中高一貫校から複数が女子枠で入ってきていることもあります。特定の高校に通っていると大学への入学のファストパスがもらえるというのは、指定校推薦みたいだなと」
ヤスダさんは両親が共働きで、実家の世帯年収は1000万円を超えます。小学生の頃から水泳とそろばんに通い、公立中学では成績優秀で部活も頑張り、地元では「優秀な子」として扱われてきました。
しかし、そんな自分が決して恵まれていたとは思えなくなってきたと言います。
「一度、アメリカから来た研究者と接することがありました。女子枠の子たちは物怖じせず英語で会話をしていました。私立校ってネイティブの英語の先生がいるのが当たり前なので、英会話ができて当たり前なんですよね」
一般選抜組がふと思い出した、「あのこは貴族」
女子枠の学生の流ちょうな英語を聞きながら、ヤスダさんがふと思い出したのは『あのこは貴族』(山内マリ子原作・岨手由貴子監督)という映画のキャッチコピーだったそうです。この映画は、東京に生まれ、箱入り娘として何不自由なく育った華子(門脇麦)と、地方出身で猛勉強の末に名門大学に入るも、経済的な理由で中退し東京で生きる美紀(水原希子)という2人のヒロインが交差することから生まれるストーリーです。「同じ空の下、私たちは違う階層(セカイ)を生きている——」が映画のキャッチコピーでした。
「高校や予備校で一緒だった女子で、東京科学大学の理工系の一般選抜を受けて不合格だった子が複数いました。後期で地方の国立大学を受験して進学したり、早稲田や東京理科大に進学したり。みんな公立高校の子たちでした。あの子たちも女子枠のことを全然知らなかったと思います」
大学では女子が少ないので、友達を作る選択肢があまりありません。そのため、女子は全員、仲良くしなくてはいけない空気があります。ヤスダさんには、女子枠の学生たちが「女子枠批判」の盛り上がりに傷ついていることも伝わってくるそうです。
「映画『あのこは貴族』のお嬢様の華子も、親の敷いたレールの上を歩いていき、行き詰まります。女子枠の子たちも同じなんじゃないですか。親や先生のいう通りに小さい頃から勉強してきたけれど、批判される立場になって傷ついています。華子は離婚して自立のために働き出しますが、女子枠の子たちはどうやって自分を救済していくのでしょうか」
大学に入学して、女子学生の間の格差に直面したヤスダさん。一方で、格差の上にいるとされる「女子枠貴族」も、決して楽なわけではないということがよく分かるお話でした。 この記事の執筆者:佐藤れん プロフィール
受験業界に身を置く教育ライター。専門はジェンダーと大学受験。かつては大学の非常勤講師をしていたことも。



