さらに今の子どもたちは、対面だけでなくSNSでも人間関係を築く時代。親の見えないところで放たれた何気ない言葉が、相手を深く傷つけるリスクも抱えています。
いじめは被害者だけでなく、「見ているだけの子」の心をも壊してしまう——。
では親は、何を前提に子どもと向き合うべきなのか。ジャーナリスト・池上彰氏の著書『法で裁けない正義の行方』(主婦の友社)から、子育て世代が知るべき残酷な現実と対策を一部抜粋・編集して紹介します。
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「うちの子に限って」は通用しない。いじめは“必ず起きる”と疑うべき理由
残念ながら人間社会では、いつでもどこでも、大人になっても、いじめは起き得るものです。軍隊のいじめは特に暴力的で、古今東西、世界中の軍隊でたくさん起きています。会社組織でもいじめやハラスメントは起きています。
そのため親や教師は、子どもたちに対して「いじめなんて起きていないはずだ」「いじめに至るのは特殊なケースで、滅多に起きないものだ」などと考えるのではなく、まずは「いじめはどこでも起きるものなんだ」「この学校やクラスでも、いじめは起きているかもしれない」などと、いじめはあるという大前提に立つべきでしょう。
そして、いじめをどうやって早く見つけるか、やめさせるのかに注力をしていくべきです。
子ども同士でのいじめを、親や教師が見つけるのは難しいものです。
子どもは特に親には、「心配をかけたくない」という思いでいじめられていることを告白したがりません。
また加害者側の子どもも、途中で良心の呵責(かしゃく)に苛さいなまれて自分の過ちを大人に伝えようと思ったとしても、自分の都合の悪いことはなかなか言い出せないものです。
被害者だけではない。データが示す「傍観者」や「加害者」の恐ろしい末路
各種の研究によって、いじめの被害者には自己肯定感の低下、不登校による学力や社会的能力の低下のほか、不安や抑うつ、PTSD(心的外傷後ストレス障害。フラッシュバックや睡眠障害、逃避行動などの症状が続く)を発症するなどの影響もあることがわかっています。アメリカのいじめ問題研究者として知られるアラン・L・ビーン博士は、「小学4年生から中学2年生の25%が、いじめが原因で学力が低下した」という研究結果を1999年に発表しています。
また2004年にはアメリカの研究者グレゴリー・R・ジョンソン博士が「いじめの傍観者も、いじめの被害者と同程度の心理的苦痛を抱く」と指摘しました。
さらに加害者についても、「8歳のときに攻撃的な男子は、大人になってから何らかの犯罪者になる確率が高い」と指摘されています(1987年、レオナード・D・エロン博士、アメリカ)。
つまりいじめは、被害者だけでなく傍観者にも加害者にも、負の影響を与えてしまうのです。
だからこそ学校現場では、一見いじめがなさそうでも「いじめが起きているかもしれない」と考え、対策を行い続けなければならないのです。



