3兆円の国内市場に“最適化”しすぎた防衛産業
今、日本の防衛産業は転機を迎えています。ここで「転機」というのは、2つの理由があります。その1つ目が、防衛産業から撤退する中小企業が増えつつあるということ。そしてもう1つは、防衛装備の移転。要するに武器輸出が緩和されているということです。
後者は防衛産業からすればいいニュースのはずですが、ではなぜそこで撤退が起こっているのか、という疑問が湧きます。それを考えたときに行き着く答えが、日本の防衛産業の特殊性です。
防衛費5兆円の時代は、人件費がおよそ4割で2兆円。残りの3兆円にプラスαの補正予算がついて、3兆5000億円くらいが何らかのかたちで防衛産業のどこかに流れることになります。
つまり、日本の防衛産業は3兆円規模の単一顧客のマーケットに対して最適化してきたと言えます。
同様に自衛隊も、3兆円を支える防衛産業に対して最適化してきたと言えます。いわゆる相互最適化という図式です。ですから、ほかの製造業のように、「国内マーケットだけでは足りないから海外マーケットを切り開こう」ということにはならなかったのです。
元々武器輸出には厳しい規制があって不可能だったというのが最大の理由ではありますが、それが長期にわたって続く間に「3兆円の中でやればいい」という状況になってきたわけです。
防衛省は低コストな超優良顧客。リスクを取らない大企業
加えて、日本の防衛産業に関わる大手企業の多くは、防衛需要への依存が極めて低い水準です。数パーセントか、せいぜい10%程度です。海外に目を向けると、ボーイング社はそれなりの数の民間機を製造しているので50%くらいの依存になりますが、ロッキードマーチン社あたりだと80〜90%を軍需に依存しており、日本の防衛産業と比較すると防衛需要も全然違うわけです。
ただし、依存率が低いから撤退、という簡単な話ではありません。主契約になるような大企業にとっては、防衛省は営業コストが小さい状態で企業全体の売り上げの数%が見込めてしまう超優良顧客とも言えるのです。企業にとっては撤退する理由はありません。
ただこうなると、新たなマーケットを開拓する理由もなくなってしまいます。売上の数%を確実に取れる状態ならば、リスクを抱えて海外に進出する必要はないのです。
輸出が緩和されて十数年が経ちます。しかし輸出が大きく増えているわけではないのは、こうした事情があるからです。



