「規則が多い公園」として知られる東京都内のある公園では、芝生エリアで球技を始めると園内アナウンスで注意されたり、人通りもまばらな平日昼間の炎天時に遊歩道の木陰でバドミントンをすると「ここは道だからだめ」と指導が入ったりと制限が多く、子どもだけでなく大人にとっても自由に体を動かす場所がなくて困るという声も聞かれます。
では海外ではどうなのでしょうか。「細かいルールが多い」というイメージを抱かれがちなスイスを見てみると、少し意外な印象を受けます。
「ルール地獄」スイスの意外とゆるい公園事情
どのルールも日本以上に細部まで定められており、まさにルール地獄ともいえるでしょう。そして違反すれば、情状酌量の余地なく高額な罰金が科されることも日常茶飯事です。そんな国ですから、公園の看板もさぞや禁止事項で埋め尽くされているのでは? と、スイス在住の筆者自身も思い込んでいました。
ところが実際に公園を見て回ると、掲示されている規則は拍子抜けするほど少ないのです。
住宅街にある小さな公園では、掲示サインが「ルーエツァイト(Ruhezeit=静穏時間)」のみということも。これは騒音を控える時間帯のことで、一般的には昼食時・夜間・日曜日などに、周囲の住民が静かに過ごせるよう配慮するというものです。行為を細かく禁止するよりも、「静謐(ひつ)な時間を守る」という形で生活のバランスを取っているように感じられます。
中規模の公園では、遊具利用時に「首から下げた鍵つきのひもを外す」「ヘルメットの着用不可」(首が締まる危険性があるため)といった安全面の注意、あるいは「犬の立ち入り禁止」「自転車の乗り入れ禁止」がピクトグラムで示されています。
広大な公園では「注射器の使用禁止」の表示を見かけることもありますが、日本の公園のように細かな禁止事項の羅列は、意外にも少ない印象でした。
スポーツ専用の無料公共施設が地区ごとに
スイスでは「Sportanlage(スポーツ施設)」と呼ばれる市営施設が各地区にあり、サッカー場やテニスコート、バスケットコートや陸上競技などの専用設備が整備されているのです。こうした場所は学校の授業で使われることもあるほか、時間帯によっては市民が無料で自由に利用できるシステムとなっており、筆者の息子も放課後や週末に利用しています。つまり、ボール遊びや運動は「公園ではなく専用の場所で行う」という都市設計があらかじめ存在しています。
このように遊びの機能が都市の中に分散されていることも、公園でのトラブル防止に一役買っているものと思われます。
遊び用道路「シュピールシュトラッセ」の存在
この区間では歩行者が優先され、車は徐行が求められます。子どもたちはそこで、アスファルトの地面にチョークで絵を描いたり、ボール遊びや追いかけっこ、縄跳び、スケートボードなど、さまざまな遊びを家の前の道路で楽しんでいます。
「車が主で子どもが遠慮する」のではなく、子どもたちの遊びの空間の中を、車が通らせてもらうという感覚に近いのです。
公園やスポーツ施設だけでなく、住宅街の道路そのものにも遊びの余地が組み込まれていることは、子どもの声や活動を社会がどのように受け止めているかを示す一つの象徴と言えるでしょう。
公園や施設以外にも多い、自然の遊び場
筆者の住む街の周辺でも、住宅地から少し歩いた森の中にこうした遊び場が点在しており、子どもたちが丸太の上を渡ったり、木登りしたりして遊んでいる光景をよく見かけます。
たき火スペースが併設されていることも多く、家族連れがソーセージやマシュマロを焼きながら、一家だんらんや誕生日パーティーを楽しんでいることも珍しくありません。都市公園とは別に、自然そのものが遊び場として機能しているようです。
「自由」にともなう代償もある
ヨーロッパではこの「自己責任」の概念が社会の随所で顔を出します。何か起きた際、まず問われるのは自分の注意義務。だからこそ、みな否応なく慎重にならざるを得ません。
それに対して日本では、事故が起きた場合、その責任は管理者側により強く問われる傾向があるように思えます。日本の公園で禁止事項が増えている背景には、近隣住民からの苦情や事故発生時の責任問題などを避けるため、管理側があらかじめリスクを排除しようとする事情があるのではないでしょうか。
こうして見ると、公園のルールの多さは、そうした社会の仕組みや人々の意識と深くかかわっていることが見えてきます。
日本でも少しずつ、「ボール遊びができる公園」など“専用エリア”の設置が進んでいると聞きます。自分たちの未来を託す子どもたちが安心して遊べる場所をどう確保するのか、生活者の一人ひとりが考え直す時なのかもしれません。
この記事の執筆者:
ライジンガー 真樹
オーストリア ガイド
元CAのスイス在住ライター。南米留学やフライトの合間の海外旅行など、多方面で培った国際経験を活かして、外国人の不可思議な言動や、外から見ると実はおもしろい国ニッポンにフォーカスしたカルチャーショック解説記事を主に執筆。日本語・英語・ドイツ語・スペイン語の4ヶ国語を話す。
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