日本の公園はなぜ「禁止」ばかり? “ルール地獄”スイスの公園が意外にゆるい「納得の理由」

日本の公園はなぜ「禁止」ばかり? では海外の公園ルールはどうなっているのでしょうか。ヨーロッパ在住の筆者が、厳格なルールで知られるスイスの公園事情をリポートします。

子どもにとって身近な球技も、禁止する公園が増えている(サムネイル画像:PIXTA)
子どもにとって身近な球技を禁止する公園が増えている(サムネイル画像:PIXTA)
日本では近年、公園利用時のルールが急増していると聞きます。近隣住民からの苦情や利用者同士のトラブルに配慮し、ボール遊び禁止や年齢区分、さらには遊ぶ際の服装規定を設ける例もあるとか。あまりの息苦しさに驚くばかりです。

「規則が多い公園」として知られる東京都内のある公園では、芝生エリアで球技を始めると園内アナウンスで注意されたり、人通りもまばらな平日昼間の炎天時に遊歩道の木陰でバドミントンをすると「ここは道だからだめ」と指導が入ったりと制限が多く、子どもだけでなく大人にとっても自由に体を動かす場所がなくて困るという声も聞かれます。

では海外ではどうなのでしょうか。「細かいルールが多い」というイメージを抱かれがちなスイスを見てみると、少し意外な印象を受けます。

「ルール地獄」スイスの意外とゆるい公園事情

小さな遊び場では、サッカーをしてはいけない時間帯のみの記載(画像は筆者撮影)
小さな遊び場では「Spielplatz - Regelung(遊び場の規則)」としてサッカーをしてはいけない時間帯のみ記載(筆者撮影)
スイスは厳格なゴミ出しルールに始まり、洗濯機やシャワーを使用できる時間帯、路上駐車の規則(タイヤが駐車線を踏んでいれば罰金など)まで、日常生活は規則に次ぐ規則で、がんじがらめです。

どのルールも日本以上に細部まで定められており、まさにルール地獄ともいえるでしょう。そして違反すれば、情状酌量の余地なく高額な罰金が科されることも日常茶飯事です。そんな国ですから、公園の看板もさぞや禁止事項で埋め尽くされているのでは? と、スイス在住の筆者自身も思い込んでいました。

ところが実際に公園を見て回ると、掲示されている規則は拍子抜けするほど少ないのです。

住宅街にある小さな公園では、掲示サインが「ルーエツァイト(Ruhezeit=静穏時間)」のみということも。これは騒音を控える時間帯のことで、一般的には昼食時・夜間・日曜日などに、周囲の住民が静かに過ごせるよう配慮するというものです。行為を細かく禁止するよりも、「静謐(ひつ)な時間を守る」という形で生活のバランスを取っているように感じられます。

中規模の公園では、遊具利用時に「首から下げた鍵つきのひもを外す」「ヘルメットの着用不可」(首が締まる危険性があるため)といった安全面の注意、あるいは「犬の立ち入り禁止」「自転車の乗り入れ禁止」がピクトグラムで示されています。

広大な公園では「注射器の使用禁止」の表示を見かけることもありますが、日本の公園のように細かな禁止事項の羅列は、意外にも少ない印象でした。

スポーツ専用の無料公共施設が地区ごとに

市営のサッカーグラウンド。開放されている時間内であれば、誰でも無料で自由に使用できるのが魅力(筆者撮影)
市営のサッカーグラウンド。開放時間であれば、誰でも無料で自由に使用できる(筆者撮影)
スイスに限らずヨーロッパの都市では、公園とは別にスポーツ用の公共施設が多く用意されていることが特徴として挙げられます。

スイスでは「Sportanlage(スポーツ施設)」と呼ばれる市営施設が各地区にあり、サッカー場やテニスコート、バスケットコートや陸上競技などの専用設備が整備されているのです。こうした場所は学校の授業で使われることもあるほか、時間帯によっては市民が無料で自由に利用できるシステムとなっており、筆者の息子も放課後や週末に利用しています。つまり、ボール遊びや運動は「公園ではなく専用の場所で行う」という都市設計があらかじめ存在しています。

このように遊びの機能が都市の中に分散されていることも、公園でのトラブル防止に一役買っているものと思われます。

遊び用道路「シュピールシュトラッセ」の存在

スイスの住宅街によくある、子供が遊ぶ前提の道路「シュピールシュトラッセ(遊び用道路)」。カラフルな旗が目印で、歩行者優先と車の徐行が定められている(筆者撮影)
スイスの住宅街によくある、子どもが遊ぶ前提の道路「シュピールシュトラッセ(遊び用道路)」。カラフルな旗が目印で、歩行者優先と車の徐行が定められている(筆者撮影)
無料で使える公共の遊び場やスポーツ施設のほかに、スイスの子どもたちの遊び環境を語るうえで見逃せないのが「シュピールシュトラッセ(Spielstrasse)」の存在です。これは住宅街の中に設けられる「子どもが遊ぶことを前提とした道路」で、入口には目印のカラフルな旗が掲げられ、遊び場として使われる道路であることが表示されています。

この区間では歩行者が優先され、車は徐行が求められます。子どもたちはそこで、アスファルトの地面にチョークで絵を描いたり、ボール遊びや追いかけっこ、縄跳び、スケートボードなど、さまざまな遊びを家の前の道路で楽しんでいます。

「車が主で子どもが遠慮する」のではなく、子どもたちの遊びの空間の中を、車が通らせてもらうという感覚に近いのです。
 
公園やスポーツ施設だけでなく、住宅街の道路そのものにも遊びの余地が組み込まれていることは、子どもの声や活動を社会がどのように受け止めているかを示す一つの象徴と言えるでしょう。

公園や施設以外にも多い、自然の遊び場

森の中に設けられている遊び場兼キャンプファイヤー場。 暖かい時期には子連れのファミリーに大人気の憩いの場(筆者撮影)
森の中に設けられた遊び場兼キャンプファイヤー場。暖かい時期には子連れのファミリーに大人気の憩いの場(筆者撮影)
さらに印象的なのは、スイスでは子どもが遊ぶ場所が必ずしも「公園や施設だけ」ではないことです。アルプスの国だけあり、住宅地のすぐ横に森が広がっていることも多く、森の中に丸太やロープを使った遊び場が設けられていたりします。こうした「森の遊び場」は整備された公園とは異なり、自然の地形や木々を生かした遊び方ができる場所です。

筆者の住む街の周辺でも、住宅地から少し歩いた森の中にこうした遊び場が点在しており、子どもたちが丸太の上を渡ったり、木登りしたりして遊んでいる光景をよく見かけます。

たき火スペースが併設されていることも多く、家族連れがソーセージやマシュマロを焼きながら、一家だんらんや誕生日パーティーを楽しんでいることも珍しくありません。都市公園とは別に、自然そのものが遊び場として機能しているようです。

「自由」にともなう代償もある

森の入り口に建てられたサイン。「立ち入りは自己責任で」と明示されている(筆者撮影)
森の入り口に建てられたサイン。「立ち入りは自己責任で」と明示されている(筆者撮影)
ただし、森の入口などには、「Betreten auf eigene Gefahr(立ち入りは自己責任で)」といった趣旨の看板が立っていることもあります。危険が皆無とは言い切れない場所では、基本的には利用者が自己判断で行動し、自らを守る、そんな発想が前提になっています。

ヨーロッパではこの「自己責任」の概念が社会の随所で顔を出します。何か起きた際、まず問われるのは自分の注意義務。だからこそ、みな否応なく慎重にならざるを得ません。

それに対して日本では、事故が起きた場合、その責任は管理者側により強く問われる傾向があるように思えます。日本の公園で禁止事項が増えている背景には、近隣住民からの苦情や事故発生時の責任問題などを避けるため、管理側があらかじめリスクを排除しようとする事情があるのではないでしょうか。

こうして見ると、公園のルールの多さは、そうした社会の仕組みや人々の意識と深くかかわっていることが見えてきます。

日本でも少しずつ、「ボール遊びができる公園」など“専用エリア”の設置が進んでいると聞きます。自分たちの未来を託す子どもたちが安心して遊べる場所をどう確保するのか、生活者の一人ひとりが考え直す時なのかもしれません。
ライジンガー 真樹
この記事の執筆者: ライジンガー 真樹
オーストリア ガイド
元CAのスイス在住ライター。南米留学やフライトの合間の海外旅行など、多方面で培った国際経験を活かして、外国人の不可思議な言動や、外から見ると実はおもしろい国ニッポンにフォーカスしたカルチャーショック解説記事を主に執筆。日本語・英語・ドイツ語・スペイン語の4ヶ国語を話す。 ...続きを読む
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