ヒナタカの雑食系映画論 第216回

『ウィキッド 永遠の約束』を見る前に知ってほしい8つのこと。今の日本でも他人事ではない理由

『ウィキッド 永遠の約束』について、作品の立ち位置や、新たな楽曲など、見る前に知ってほしい8つのことのことを解説しましょう。日本でもまったく他人事ではない問題が描かれていることは、前編から続けて見るからこそ分かるのです。(※画像出典:(C) Universal Studios. All Rights Reserved.)

7:「分断からの選択」に絡む「対比」の描写

今回の後編『永遠の約束』の物語で特に重要なのは、「善い魔女」となったグリンダと、「悪い魔女」となったエルファバがそれぞれ「分断からの選択」を迫られることと、それに至るまでの残酷なまでの「対比」でしょう。

グリンダは希望の象徴として名声と人気を手にするも、ほとんど「祭り上げられている」「為政者に人気を利用されている」という立場。そのことをグリンダは半ば気づいており、さらに親友であったエルファバとの決別が、暗い影を落とすことになります。
一方で、エルファバは言葉を奪われた動物たちの自由のために、ほぼ「孤独」のままで戦うことを決意しています。そのエルファバが中盤でおぞましい真相が明らかになる「ある場所」を歩くシーンも含めて、グリンダの「きらびやかな道を進んでいるように見えるが、実際には彼女は真実から切り離されている」立場と、目に見える形で正反対になっているのです。
さらには、2人はフィエロという護衛隊の隊長を巡っても対立をしてしまいます。「男性を取り合う」と書くと物語が矮小化されたような印象もありますが、実際の劇中でもその様をこっけいに描く場面があり、2人の仲違いそのものが「悲しくもおかしい」というバランスで示されてもいるのです。
ウィキッド
(C) Universal Studios. All Rights Reserved.
もちろん、決定的に対立した2人の関係は「笑って終われる」ようなものではありません。むしろ、前編の冒頭ではっきり示されたように、「グリンダにとっての最愛の友人であるエルファバが、多くの人にとっての『悪』になった上に、死んだことが人々から喜ばれてしまう」という「バッドエンドが確定している物語」なのです。

だからこそ、固唾を飲んで2人の行く末を追ってしまう内容とも言えますし、その「確定した結末だけが真実ではない」物語こそを、楽しみにしてほしいです。

8:「差別と迫害」を描いた物語だからこそ

映画『ウィキッド』2部作を続けて見ると、人類史にある「差別と迫害」の問題をはっきり描いていることが、より伝わるでしょう。

前編から、車いすの女性(エルファバの妹のネッサローズ)や多様な人種が住まうオズという場所は、多様性があるように見える一方、ヤギの教授が文字通りに「スケープゴート」にされるなど、言葉を話す動物たちが政治的に排斥されてしまいます。それは、これまで世界中にあった人種差別や迫害、さらには日本にはびこる排外主義の価値観にも当てはまっています。
ウィキッド永遠
(C) Universal Studios. All Rights Reserved.
一見すると無垢な女性であるグリンダが、表向きは為政者として支持されるも、実際には真相の「隠れ蓑」のような存在になっているというのも、残念ながら他人事ではない問題でしょう。

その差別や偏見や排外主義に「反抗」することが、いかに難しいかも丹念に描かれています。一方で安易にその価値観に「迎合」することもしません。そして、己の価値観と周りの状況との板挟みになるグリンダとエルファバが、それぞれの葛藤を経ての行動と、「結末のその先」に待ち受けけていたことに、筆者は涙を禁じ得ませんでした。
ウィキッド永遠
(C) Universal Studios. All Rights Reserved.
それは安易な解決策では決してないし、むしろ「課題」が、この映画を見る多くの人の未来に託された、という言い方もできるでしょう。それをもって、この『ウィキッド』の物語が、より良い未来の足がかりになることを、願わずにはいられない……それこそが、この映画の最大の価値なのかもしれません。
ヒナタカ
この記事の執筆者: ヒナタカ
映画 ガイド
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。 ...続きを読む
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