恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」 第123回

江ノ電20年ぶり新車、謎の「1人掛け席」の正体は? 観光サービスではなく「混雑地獄」に挑む苦肉の策

江ノ電が20年ぶりに導入する新型車両「700形」。一見、観光に特化した優雅な座席配置に見えるが、実は深刻化する「混雑地獄」に立ち向かうための苦肉の策だった。増発も増結もできない物理的限界の中で編み出された、驚きの「スペース確保」戦略とは?

1人掛けクロスシートの効用

どういうことか説明しよう。

車内がオールロングシートであると、乗客が足を投げ出したりして、シート以外のスペースが有効に活用されない。大混雑時には立っている乗客と座っている乗客の足元が接触して不快な気分になることが多々ある。

これが、1人掛けクロスシートならどうなるか? 足が通路にはみ出さない限り、座っている人と立っている人とが不快に触れ合う可能性は極めて低くなる。

よくある2人掛け向かい合わせのクロスシート(いわゆるボックス席)の場合、どうしてもスペースに無駄が生まれやすい。足元の狭さから対面に人が座るのを敬遠したり、隣に荷物を置いたりして、4人の定員に対して実際は2〜3人しか座らないケースが多発するためだ。

また、座席が張り出すぶん通路(立席スペース)が狭くなるのも難点だ。通路が窮屈だと乗客は車両の中ほどまで進もうとせず、広いドア付近にとどまってしまう。

これが乗降の妨げとなり、遅延や混雑の悪化を招く原因となる。それゆえ、混雑対策においてクロスシートは不適であるとやり玉に挙げられることも多い。

そうしたことを想定すると、1人掛けクロスシートというのは、車内の混雑対策としては、よく考えられた座席配置とも言えよう。

スーツケース問題への回答

フリースペース
右側のドア付近のフリースペース。ここにスーツケースを置くこともできる
さらに問題となっているのが海外からの観光客が持ち込む大型スーツケースだ。狭い車内においては混乱を増幅する要因ともなる。

それをある程度緩和するのが、車内のフリースペースだ。

新型車両では、ドア付近ぎりぎりまで座席を配置しないで余裕を持たせている。ここは車椅子やベビーカー置場としての利用のみならず、スーツケース置き場とすることも可能だ。
バケットシート
座る位置をはっきりさせるため凹みを設けたバケットシート。体格の大きな外国人に合わせてゆったりしている
また、各座席は一人ひとりの座席面積をはっきりさせるバケットタイプのシートとしている。しかも1人分の座席面積を拡大し、体格が大きな欧米人が窮屈にならないよう配慮されている。

ちょっとしたところで少しでも快適さを損なわないよう苦心の跡がみられる。
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「地獄」はまた必ずやってくる。インバウンド完全復活に備えた「切り札」
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