仲のいい国にしか行かない。日本パンダ“ゼロ”の衝撃…かわいさの裏に隠された「冷徹なルール」

2026年1月、ついに日本からパンダがいなくなります。1972年の熱狂から半世紀。なぜ中国は賠償を放棄しパンダを贈ったのか?かわいさの裏にある「最強の外交カード」の真実と田中角栄の決断を、ジャーナリスト・武田一顕氏が解説します。(画像出典:PIXTA)

画像はイメージ(画像出典:PIXTA)
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2026年1月下旬、シャオシャオとレイレイが中国へ返還されます。これにより、約半世紀ぶりに日本からパンダがいなくなります。

1972年、カンカンとランランの来日から始まった日本の「パンダフィーバー」。しかし、あの愛くるしい白黒の動物が、実は中国が切った「最強の外交カード」だったことをご存じでしょうか?

田中角栄首相と周恩来総理、そして毛沢東。歴史的偉人たちが繰り広げたギリギリの交渉と、その裏で動いた思惑とは。

中国通ジャーナリスト・武田一顕氏の著書『日本人が知っておくべき中国のこと』(辰巳出版)より一部抜粋・編集し、今も続く「パンダ外交」の起源をひもときます。

田中角栄が切り開いた「パンダ外交」の幕開け

現在の中華人民共和国と日本との国交が正常化したのは、1972年9月、当時の田中角栄政権のときです。

田中の前の佐藤栄作政権まで、日本は、今の台湾の国民党政権を中華民国の正当な政権と認めて、中華人民共和国とは正式な政府間の関係がありませんでした。

田中は、1972年の7月に自民党総裁選で福田赳夫(たけお)を破り総理大臣に就任してすぐ、中華人民共和国と国交を回復する意思を明確にしました。

9月には、田中は日本の現職の総理大臣として、初めて中国の首都・北京市を訪れます。

国務院総理(中華人民共和国の最高国家行政機関、国務院主宰)の周恩来(しゅうおんらい)と会談を重ね、中国共産党主席の最高権力者・毛沢東との会談にたどり着き、9月29日、日中共同声明(日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明)に、周恩来、両国外相の大平正芳、姫鵬飛(きほうひ)と共に署名しました。

「日本と中国いま国交 戦争状態終結きょう実現 平和友好条約締結に同意 歴史をひらく共同声明 日台条約は終了」(1972年9月29日『朝日新聞』夕刊)

「日中国交ひらく 共同声明を発表 北京で両首相署名 不正常状態は終了 台湾の中国帰属を理解」(1972年9月29日『読売新聞』夕刊)

日中の国交が回復した日の新聞は、このニュースを一面トップで報じました。

日中共同声明に記された“けじめ”の真実

日中共同声明では、平和友好関係を確立するために、次のようなことなどを確認し合っています。

・日中間の戦争の終結、不正常な状態に終止符を打ち、外交関係を樹立すること。

・中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であり、台湾は中華人民共和国の領土の一部であると承認・理解すること。

・国家の主権や領土保全に対する相互の尊重と不可侵、内政に対する不干渉。


そして中国は、この共同声明の中で「日本に対する戦争賠償の請求を放棄する」ことを宣言しています。1972年の時点で、中国は日中戦争の賠償請求権を明確に放棄しているのです。

そのため、日本は一度けじめをつけたと判断しました。

ところが、この後今日に至るまで、日中間で戦争と謝罪という問題がくすぶり続けることになります。

賠償金の名目では支払わなくても、ODAというかたちでこの後に中国に多額なお金を渡し始めています。

そもそも賠償請求権の放棄に関しては、日本と中華民国の戦争の状態の終了と共に、1952年に結ばれた「日華平和条約」において取り決められています。

ただし前述の通り、当時の日本は蒋介石政権下の中華民国を中国の正当な政府とみなしており、中華人民共和国を認めていませんでした。

そのため、この時点で中華民国との平和条約は結ばれたものの、中華人民共和国との正式な国交は回復されないままだったのです。

国交の回復にあたり、田中角栄の決断の上で最も重要な判断材料のひとつが賠償権についてでした。

当時の中華人民共和国の国務院総理・周恩来が、賠償請求の放棄を認める意向があることがわかり、田中は訪中を決意します。

水面下での激しい交渉を経て、1972年9月、ついに歴史的な日中共同声明が調印されました。そして、この国交正常化の「友好の証」として、あの2頭が日本にやってくることになります。
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日本中が揺れた! 初来日「カンカン・ランラン」熱狂の舞台裏
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