ヒナタカの雑食系映画論 第205回

『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』好評の一方で、“マンネリ”の指摘も? 映画館で必見の理由

『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』の「どの上映方式を選べばいい?」ことから、基本的には好評ながら厳しい意見もある理由、それでも称賛できる理由まで、解説します。(画像出典:(C)  2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.)

「2人の父親」の間で揺れる「スパイダー」の物語

今回の『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』で、もっとも劇的な変化が訪れるのは、「スパイダー」でしょう。彼は幼い頃に「惑星パンドラ」に取り残された少年で、今では「ナヴィ」族のサリー家に養子として迎えられています。
人間の体のために、惑星パンドラの環境ではマスク着用が必須というハンデを背負っているものの、義理のきょうだいたちとともに楽しく過ごしてきた彼には重大な試練、というよりも「2人の父親」との「対峙」を余儀なくされるのです。

その1人が、海兵隊の人間として絶命したものの、人間とナヴィのハイブリッド戦士として復活した「クオリッチ」。彼は自身を一度殺した主人公の「ジェイク・サリー」への復讐に燃えている一方、自身の息子であるスパイダーへの愛情も垣間見えるという、なかなかに複雑な立ち位置および、心情の持ち主です。
そのジェイク・サリーは人間の体を捨ててナヴィになった元海兵隊員であり、家族を大切にしている一方で、序盤から息子たちの気持ちを顧みない、独善的な言動が疎まれてしまいます。しかも、物語の後半では養子のスパイダーに対して、客観的にはどう考えても許されない、とある決断をしてしまいます。
実の父親のクオリッチと、養子として迎えられた今の父親であるジェイク・サリー。その2人の父親の息子であるスパイダーの物語がどこに行き着くのか……それは前作『ウェイ・オブ・ウォーター』では描ききれなかったことであり、「後編」といえる本作で決着をつける必要があったと思えたのです。

「喪失感」を抱えた家族それぞれの変化

スパイダーのほかにも、サリー家それぞれのキャラクターの変化は、やはり興味深いものになっています。
アバター
(C)  2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

・ネイティリ:サリー家の母。勇敢な戦士であるが、前作で長男のネテヤムを亡くしたため精神的に病んでもいる。
・ロアク:サリー家の次男。亡くなった兄のネテヤムに複雑な感情を抱いており、行動が猪突猛進で危ういところがある。海のメトカイナ族のリーダーの娘であるツィレアと惹かれあっている。
・キリ:サリー家の養女。亡くなった人間のグレイス博士のアバターから誕生していた。スパイダーと仲良し。

「兄のネテヤムが亡くなったことが家族に影を落としている」「人間のスパイダーが大切な家族になっている」ことを踏まえれば、それぞれのキャラクターの変化と成長も、より味わい深くなるでしょう。
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