ヒナタカの雑食系映画論 第205回

『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』好評の一方で、“マンネリ”の指摘も? 映画館で必見の理由

『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』の「どの上映方式を選べばいい?」ことから、基本的には好評ながら厳しい意見もある理由、それでも称賛できる理由まで、解説します。(画像出典:(C)  2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.)

基本的には好評。ただしマンネリを指摘する厳しい意見も

そんな『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』の作品評価は、「高いレベルながらやや賛否を呼んでいる」といえます。映画.comでは5点満点中3.8点、Filmarksでは4.0点と十分に好評といえるスコアですが、アメリカの批評サービスのRotten Tomatoesでの批評家支持率は66%に留まっていたりもするのです(いずれも12月下旬)。

特によく見られるのが、「既視感がある」「新鮮味が薄い」といった、マンネリズムを指摘する意見です。確かに全体的な物語の印象は、「先住民と侵略者である人間たちの戦い」「その間にいる主人公が決死の行動をする」「植民地化による資源の搾取や自然破壊への批判」といった「物語の大筋と根幹」がシリーズ3作で共通しています。

それでも2作目の『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』では、1作目とは明確に異なる「海の上の美しい光景と迫力のバトルシーン」と「主人公に家族ができてこそのドラマ」という要素があったため、それほどマンネリズムを感じさせませんでした。

しかし、今回の3作目『ファイヤー・アンド・アッシュ』はその2点が「地続き」な上に、1作目から物語の大筋と根幹は共通しているので、「2作目と(あるいは1作目とも)やっていることはほぼ同じでは?」という不満の声があるのも、致し方がないと思えたのです。

また、ジェームズ・キャメロン監督は1作目の時点から、劇場パンフレットに「見慣れない環境で、見慣れたタイプのアドベンチャーを作り出したいと思った。異星の土地と文化を舞台とした、典型的なストーリー」と言い切っていたりもします。

1作目の公開当時から『風の谷のナウシカ』や『ポカホンタス』や『ダンス・ウィズ・ウルブズ』などの既存の有名な映画との類似性も指摘されていましたし、3作で共通する物語そのものが「よくある」ものであったと思うのです。

キャラクターの成長や関係は「前に進んでいる」

そのように「全体的には典型的な物語」かつ「シリーズで同じことの繰り返し」のような内容への不満が出るのは当然のこと……と思いつつ、その批判をするだけではもったいない、という気持ちも同居しています。

なぜなら、この3作目では、2作目であった出来事を踏まえてキャラクターたちが「前に進んでいる」と思えたからです。大枠ではマンネリを感じたとしても、それぞれの心情や関係性に着目すれば、かなり面白く見られるのではないでしょうか。
アバター
(C)  2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
また、ジェームズ・キャメロン監督は「2作目と3作目はもともと1本の映画として公開する予定だったものの、物語が長大になりすぎたため、2作に分割した」と明言しています。その言葉を踏まえて「キャラクターの成長」を物語の軸に置いて考えれば、2作目が「前編」で今回の3作目が「後編」とさえ思えたのです。

ここからは、キャラクターの魅力や成長を振り返ってみましょう。これらを踏まえれば、前2作を見ていない人でも楽しめると思うのです。公式Webサイトにはキャラクター紹介のページもあるため、前2作を見た人であっても設定を忘れてしまっているのであれば、ぜひ一度目を通しておくことをおすすめします。
アバター
(C)  2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.
そのほか、固有名詞は「エイワ」が「惑星パンドラの調和を保つ神のような存在」、「スカイ・ピープル」が「人間/地球人」を指すという2点だけ押さえておけば、しっかり物語を飲み込めるでしょう。

※以下、今回の3作目『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』の明確なネタバレは避けたつもりですが、2作目『ウェイ・オブ・ウォーター』および1作目のネタバレに触れています。ご注意ください。
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「2人の父親」の間で揺れる「スパイダー」の物語
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