クマは驚くほど「食べ方が雑」だった。自然写真家が見た、枝を折り捨て、毒草も利用する意外な食生活

2025年のクマ出没増加の背景には、食糧の変化が関係している可能性も。自然写真家が現地で目撃した、春のブナ花芽食べから夏の樹皮剥ぎ、さまざまな食べ物まで――ツキノワグマの食行動を、詳細な観察例から紹介します。(サムネイル画像出典:PIXTA)

ミズバショウから動物まで、クマの多様な食事メニュー

ツキノワグマは雑食性で、さまざまなものを食べていることは、いろいろな本に書かれています。

一般的には、やみくもに歩いて目の前のものを食べる、というように受け止められていることが多いのですが、実際にはさまざまな植物の生えている場所を記憶し、毎年の結実状況を確かめ、季節になれば的確に移動するなど、計画的に行動しているのではないかと受け止めています。

・ミズバショウを食べる
人間からみれば、美しい花であると同時に毒草としても知られていますが、ツキノワグマはミズバショウを食べます。春に花を食べることもありますが、大人の腰のあたりまで伸びた大きな葉を食べた跡を、初夏や初秋に見たことがあります。人間にとって有毒な成分でも、クマにとっては毒ではないのでしょう。

ここで重要なのは、同じ場所にたくさん生えていても、食べている葉は数枚に限られているので、明らかに主食として食べているわけではないことです。なにか特定の場面で、人間にとっての薬草のような使い方をしている可能性が高いと考えています。

・動物を襲う
ツキノワグマが動物を襲う場面を見たことがあります。2020年6月20日、兵庫県北部の低山のブナ林でのことでした。

林道の角を曲がったら正面にツキノワグマがいたので、あわてて見えないところまで戻ってカメラのレンズを交換していると、クマは逃げるどころかこちらに向かって走り出します。まずい、と少し離れて身を隠したところ、クマは斜面を下に向かって走り、直後にシカの子どもと思われる悲鳴と、母親のシカの鋭い鳴き声が聞こえました。

藪の向こうに目をこらすと、仔ジカをくわえて歩き去るツキノワグマの影が少し見えましたが、すぐに見えなくなりました。

・ミツバチを襲う
夏になると、ツキノワグマはサクラ類やクワなどの木の実を食べる以外にも、好んで現れる場所があります。それはミツバチの巣です。

養蜂家が並べたセイヨウミツバチの巣箱が襲われることもありますし、自然状態で木の洞に巣を作っているトウヨウミツバチの巣が食べられた跡もしばしば見かけます。

クマはなぜ人里に出てきたのか
クマはなぜ人里に出てきたのか

この書籍の執筆者:永幡嘉之 プロフィール
自然写真家・著述家。1973年兵庫県生まれ、信州大学大学院農学研究科修了。山形県を拠点に動植物の調査・撮影を行う。ライフワークは世界のブナの森の動植物を調べることと、里山の歴史を読み解くこと。里山の自然環境や文化を次世代に残すことに、長年取り組む。著書に『クマはなぜ人里に出てきたのか』(旬報社)、『里山危機』(岩波ブックレット)、『大津波のあとの生きものたち』(少年写真新聞社)、『巨大津波は生態系をどう変えたか』(講談社)など。

次ページ
【写真で見る】写真家が捉えた「食い散らかし」の現場
Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

編集部が選ぶおすすめ記事

注目の連載

  • どうする学校?どうなの保護者?

    「まだ体育館で軟禁されてるの?」役員決めを廃止したPTA、保護者と先生が手にした“穏やかな春”

  • ヒナタカの雑食系映画論

    映画『鬼の花嫁』で永瀬廉が体現する「俺様ではない魅力」とは。『シンデレラ』的物語へのアンチテーゼも

  • 恵比寿始発「鉄道雑学ニュース」

    江ノ電20年ぶり新車、謎の「1人掛け席」の正体は? 観光サービスではなく「混雑地獄」に挑む苦肉の策

  • 海外から眺めてみたら! 不思議大国ジャパン

    「移民」に冷たいのはどっちなのか? スイスの厳格過ぎる学歴選別と、日本の曖昧過ぎる外国人政策