クマが人里に近づく事例が増える2025年、食べ物の確保が行動に影響を与えていると言われています。実は、ツキノワグマの食生活は季節ごとに多彩で、時には意外なほどの雑さを見せ、毒草さえ上手に活用している模様。
自然写真家・永幡嘉之氏の著書『クマはなぜ人里に出てきたのか』(旬報社)から一部抜粋し、10年の観察から見えてきた“クマの意外な食行動パターン”を紹介します。これを知れば、クマの行動が予測しやすくなるかも?
春、ブナに上るクマは意外なほど食べ方が“雑”?
ツキノワグマは春にほころびかけたブナの新芽を食べますが、葉が広がってしまえば、あとは見向きもしません。特に、蕾の入った花芽を好みます。
晩春に尾根道をたどっていると、ブナの根元に花芽がついた小枝が折り重なっている場面を見かけることがあり、見上げるとそこだけ枝がなくなって青空が見え、どれほどたくさんの枝を折って食べたのかを思い知ります。
なお、春にはクマ棚(樹上で餌を食べる際に、折った枝を敷き詰めて座った跡。枝の上に棚があるように見えることからこう呼ばれる)を見たことがありません。
新潟県村上市の朝日山系の4カ所では、計8本のブナで足をとめて観察しました。
それにしても、食べ方の何と雑なことか。枝を折ってしまうのに、たくさんの花芽が残っているのは実にもったいないことで、歯でこそぎ落せる部分だけを口に入れると、そのまま枝を捨てているようです。
スギの樹皮を乱暴に剥ぐ「クマ剥ぎ」の謎
5月から7月にかけて、ツキノワグマがスギの人工林で次々に樹皮を剥いでまわる「クマ剥ぎ」という行動がみられます。生木の樹皮を剥がす、非常に乱暴に見える行動です。
2018年から山形県小国町と新潟県村上市で重点的に観察しているうちに、傾向がつかめてきました。
とりあえず剥いでみて、「当たり」の木は、樹皮の下の形成層をすきまなく削りながら丁寧に舐めていますが、「はずれ」の木だと、ひと口ふた口舐めただけでやめています。それは樹皮を剥いだ部分に残された歯形の密度でわかります。
そして、前年あるいは数年前に剥いだ木の残りの樹皮を剥いで、狭い部分をすきまなく舐めている場面も増えてきています。
つまり、クマはなにか特定の成分を必要としてこの行動を続けているようですが、目的の成分はスギならどの木にでも含まれているわけではなく、当たりが出るまで樹皮を剥ぎ続け、出ればしっかりと舐めるということを繰り返しているようなのです。



