ヒナタカの雑食系映画論 第199回

映画『金髪』主演・岩田剛典がこんなにダサく思えることってあるんだ……と衝撃を受けた3つの理由

公開中の映画『金髪』は良い意味で「岩田剛典のあまりのダサさ」に衝撃を受ける作品でした。その理由を3つのポイントを解説しましょう。(画像出典:(C)2025「金髪」製作委員会)

2:「おじさん発言」こそがおじさんっぽいので要注意!

さらに良い意味でしんどいのは、門脇麦が演じる彼女からの、正論も正論の言葉です。特に「おじさんになってきてるのに、おじさんじゃなくて若いフリして、受け入れられてないっていうのが、なんかベタっていうか、典型的すぎて見てらんないんだよね」という言葉のナイフが鋭利すぎて、ダメージを喰らう中年男性は多いことでしょう。
金髪
(C)2025「金髪」製作委員会
それもそのはず、主人公・市川がその直前に語っていたのは「まあ人生っていろんな可能性があるわけじゃない。今って年齢にこだわるような時代じゃないしさ。時代は変わっているっていうか。だってぜんぜんまだ若いんだし。可能性に満ちているワケでしょ」などと、長ったらしい「年齢は問題じゃない」言説でした。なるほど「あ、なるほど逆に年齢を意識しすぎていることがわかるし、これはおじさんっぽいんだな」と納得できるのです。

彼女は「別に悪いことじゃないじゃん、おじさんなのは」という言説も口にしてはいます。それでも主人公が「おじさんってこの世で一番嫌われてる存在なワケじゃん、中年男性って、マジ信じられないんだけど、絶望、絶望!マジ絶望なんだけど本当!」とみっともなく叫んだりもするのは、カッコ悪すぎて一周回ってすがすがしいほどでした。
さらに、友人からの「『自分おじさんなんで』って、『そんなことないですよ』待ちのやつ。あれももう言っちゃダメだからね。周りは困っているんだよ」という言説も、「それはそう」となるのです。
そうしたありとあらゆる「おじさん発言への正論」を聞いて、「自分も言ったことある」「そう思ったことある」「これから口にしてしまうかも」と戦々恐々とする中年男性は多いでしょう。ぜひとも、終盤の「おじさんへの諦め」の境地を示す言葉にも、良い意味でほんのり絶望してください。

3:痛快無比な逆転劇……!にはなかなかならないけど、それでも……

本作の企画のアイデアの1つは、「ブラック校則」がよくニュースで取り上げられていた当時の、イギリスの男子学生たちが校則で定められている制服規則に抗議するためスカートで登校した、という海外のニュースだったのだとか。
金髪
(C)2025「金髪」製作委員会
そのブラック校則への問題提起を備えつつも、30歳の中学教師という特定のキャラクターにフォーカスし、おじさんについての物語に仕立てたことがユニークなところ。その主人公に岩田剛典をキャスティングしたというのが、やはり本作の最大の勝因でしょう。

深瀬和美プロデューサーはオファー理由について「岩田さんって笑顔が素敵じゃないですか。でも、もしもあの笑顔の向こう側が空っぽだったら面白いなと思ったんですよね。主人公の市川は人当たりの良い人物ですが、その中身は褒められたものではありません。岩田さんが演じたらユニークなキャラクターになるのではないかと考えたんです」などと語っています。

まさにその通りの、岩田剛典というその人が持つカッコよさや素敵な笑顔さえも、劇中では主人公の「空っぽなダメさ」を引き立たせ、さらに「それだけじゃない」キャラの豊かさを与えているように思えたのです。
金髪
(C)2025「金髪」製作委員会
そんな主人公・市川のキャラ造形および、岩田剛典というキャスティングがさらに活きたのは終盤の展開です。とある窮地に陥った彼は、金髪デモを計画した張本人の生徒と手を組み、大胆な作戦に打って出る……のですが、これがいい意味で「痛快無比な逆転劇」にはなかなかなりません。

むしろ「ヌルッといつの間にか解決または飽きられてる」というような、なんとも歯切れの悪い展開が続くことがこれまたおかしいですし、時には予想だにしない事態に陥ることも含めて、なんともリアルでした。

その「現実はそんなもんだよね」な状況でふてくされる主人公の態度がまた情けなくも可笑しく、ここまで来ると応援したくなってくるのもまた、岩田剛典というその人が持つチャーミングさのおかげだと思ったのです。

それでいて、この生徒たちの金髪デモおよび、30歳の中年教師の葛藤を、「くだらない」と一蹴するような結論ではなく、「ちょっとだけポジティブ」な着地へと向かっていくことが、本作の何よりの美点でしょう。
金髪
(C)2025「金髪」製作委員会
間違っていると思うことへの抗議はもちろん悪いことではないし、おじさんだと自覚していくことももちろんその人の成長であると、生徒と先生、それぞれの立場を優しく肯定してくれるようでもありました。それは、2人の意外なラストの会話に集約されていると思うのです。

また、あんなにカッコ悪く思えた岩田剛典のナレーションが、ラストにはなかなか味わい深いところにまで行き着くので、そちらもぜひ楽しみにしてください。
ヒナタカ
この記事の執筆者: ヒナタカ
映画 ガイド
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。 ...続きを読む
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