「老後2000万円」は貯めなくていい。和田秀樹が語る、死ぬ間際に「一番後悔する」お金の使い方

「老後2000万円」は不要? 和田秀樹氏の書籍から、死ぬ間際に「貯金しすぎた」と後悔する人々の共通点と、夫婦1500万円で足りる根拠を紹介。定年前に切り替えるべき「お金より思い出」の投資術とは?(画像出典:PIXTA)

必死に貯めたそのお金、本当に老後に必要ですか?
必死に貯めたそのお金、本当に老後に必要ですか?(画像出典:PIXTA)
人生100年時代の到来に伴い、これまで私たちが「正解」だと思い込んできた人生設計は、大きく変わろうとしています。

「老後資金は2000万円必要だ」「いや、インフレだから4000万円だ」……。 メディアで繰り返されるこうした数字に、不安を募らせている50代の方は多いのではないでしょうか。そのため、「今は我慢して、少しでも多く貯金しなければ」と、現役時代の楽しみを犠牲にしている人も少なくありません。

しかし、老年精神医学の専門家である和田秀樹氏は、そうした「貯金への呪縛」こそが、人生最大の後悔を生むと指摘します。

本記事では、和田秀樹さんの著書『50歳からのチャンスを広げる 「自分軸」』(日東書院本社)から一部抜粋し、50代が今すぐ切り替えるべき「お金との付き合い方」を紹介します。なぜ「貯金はいらない」のか。その医学的な根拠とは?

老後資金は「2000万円」もいらない。和田秀樹が断言する理由

「自分軸になる生き方」を阻む大きな壁のひとつが、お金の呪縛です。

「老後に2000万円なければ生きていけない」「いや、インフレリスクを考えたら2000万円では足りない。4000万円必要だ」といった議論がテレビのワイドショーなどでも尽きません。

こうした不安を煽られれば誰でも呪縛にとらわれてしまい慎重になります。お金を貯め込み、使うことを躊躇(ちゅうちょ)してしまう人は多いはずです。

しかし、私は老年医学を長い間やっていて気がついたことがあります。歳を取るほど、人間は意外とお金を使わない、いや、使えないのです。

人間は歳を重ねれば、ヨボヨボになったり、寝たきりになったり、あるいは認知症がひどくなったりします。その頃には、家のローンも払い終わって、子どもも独立して、教育費もかからなくなっているので、経済的に余裕ができているはずです。

ところが、認知症が進んだり寝たきりになったりしたら、旅行に行ったり高級レストランで食事をしたりする機会は、まずありません。年金が支払われている人であれば、十分にそれで生活できます。病気になって入院することになっても国の保険制度を使えば支出はさほどかかりません。

要介護状態や認知症になって特別養護老人ホームに入るのも、個室に入っても介護保険があるので、通常、年金の範囲で賄えます。

その時はじめて、「一生懸命に節約して頑張って貯金なんかしなくてよかったな、損したな」という気分になるはずです。使おうと思っても使えないのです。つまり、老後の蓄えなどみなさんが心配するほど必要ないのです。

介護費用のリアル。夫婦で「1500万円」あれば十分なワケ

以前、経済ジャーナリストの荻原博子さんと対談したのですが、荻原さんは、「実際に介護を経験した人がかかった費用は、1人で平均約600万円。夫婦2人で1200万円。医療は高額療養費制度があるからそれほどかからない。200万もあれば大丈夫。とすると2人あわせて1400万円、そこにお墓代100万円を足したとしても1500万円。それぐらい貯めて後は全部使ったっていい」とおっしゃっていました。

「老後が心配」という方は、この数字をひとつの目安にしてみてはどうでしょうか。

もちろん、1500万円も手元にないという人もいるでしょうが、いよいよ寝たきりになれば広い家などいりません。設備はゴージャスでなくても介護のいい有料老人ホームなら、家を売ればおつりがくるくらいで入居できます。家を売るなりリバースモーゲージなどを使えば貯金はそれ以下でもいいことになります。

そもそも、50代のみなさんが70代、80代になるころは有料老人ホームも供給過剰の状態になっているはずです。団塊世代やポスト団塊世代向けに作られた施設が有り余っているのは明白です。介護職員の人手不足は、みなさんの時代にはロボットが補っているでしょうから、今よりも安い費用で入居できるはずです。

将来を不安に思ってお金を貯め込んでも、一番楽しめるタイミングにお金を使わなければもったいないとしか言いようがありません。体が動かなくなってから、「あれに使えばよかった」「こんなことをしてみたかった」と思っても遅いのです。

将来を不安視するよりも、今、使おうと思えば楽しく使えることを考えるべきでしょう。50代のみなさんは守りに入らずに今を楽しむためにお金を使っていくことを考えてもいいでしょう。
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「お金持ちになって死ぬ」ことの虚しさ。人生の最期に気づく「残酷な真実」
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