企業スポーツの休廃部が続いたバブル崩壊期
日産は「横浜F・マリノスは日産の伝統と価値観、地元を大切にする姿勢の象徴」と位置付けています。約75%の株主比率やユニフォームの胸のロゴからも分かるように、日産がサッカー部を所有していた時代のイメージは今も残っています。F・マリノス以外にも、柏レイソル(日立製作所)、ヴィッセル神戸(楽天)など、筆頭株主である親企業の存在感が強いクラブはあります。
バブル経済が崩壊した後、「実業団」と呼ばれた企業スポーツでは、大企業が所有するスポーツ部が休廃部に追い込まれ、会社の方針次第で消滅していく例が相次ぎました。
これに対し、Jリーグのようなプロでは、株主が分散していれば、一部の企業の業績不振だけでクラブの先行きが左右されることはないはずです。それがプロの強味でもあります。しかし、筆頭株主の影響力が強過ぎると、企業スポーツ時代のような危うさもあるのです。
3年前からJクラブの株式上場が解禁に
Jリーグでは2022年3月から加盟クラブの株式上場を解禁しました。メリットとしてJリーグは、1. クラブへの投資呼び込み、2. 資金調達の選択肢拡大、3. クラブの公益性向上、4. クラブの経営管理、体制整備、5. オーナーチェンジの促進――の5点を挙げています。
この規制緩和により、15%未満の株式が他へ移る場合であれば、従来のようなJリーグへの報告義務はなくなりました。ただし、敵対的買収や反社会的勢力などへの対策のため、15%以上の大口株主が現れる場合はリーグが審査する規定を設けています。
当時の村井満チェアマンは記者会見でこう述べています。
「(株式の)非公開会社はプライベートカンパニーと訳しますが、公開会社はパブリックという風に呼ばれます。Jリーグは公共性を非常に重要視する団体ですので、パブリックな会社が存在してもいいということで、Jリーグの理念をたがえないという前提の中、こうした経営の選択肢を増やしました」
それから3年あまり。まだ株式を上場するクラブはありませんが、今後は日本でも欧州並みのビジネスを模索し、上場に踏み切ったり、株式の売買を進めたりするケースが増えてくるかもしれません。



