ヒナタカの雑食系映画論 第184回

映画『バレリーナ』はスピンオフだからとナメてはならない! 『ジョン・ウィック』と並ぶ3つの魅力

映画『バレリーナ:The World of John Wick』がとてつもなく面白い作品でした! ナメてはならないスピンオフになった3つの理由を解説しましょう。(画像出典:(R), TM & (C) 2025 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.)

3:舞台と物語に感じる「美学」とは?

「アクションがエクストリームになりすぎて、もはや笑ってしまう」領域になっていることが『ジョン・ウィック』(2作目以降の)シリーズの魅力ですが、一方で荒唐無稽な世界観や設定に説得力を持たせる「世界観」を、圧倒的な映像美でも表現しています。
バレリーナ
(R), TM & (C) 2025 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
これまでのシリーズでは、ニューヨーク、ローマ、モロッコ、日本、パリと、世界を股にかけた舞台も魅力的でした。今回はチェコ・プラハのほか、クライマックスの舞台は「雪に覆われた東欧の街」という、これまでにないシリーズの新基軸も打ち出されています。

その東欧の街とは、オーストリアの世界遺産である「ハルシュタット」(ハンガリーの「ブダペスト」でも撮影)のこと。氷河湖のほとりにあるのどかな村で、山々に囲まれた風景は、積もる雪も相まって、とてつもなく美しく映っています。丘の斜面にあるハルシュタットは「激しい高低差」もあり、それを生かした「立体的」なアクションも展開されます。
観光シーズンのハルシュタットには数週間にわたって撮影に入ることができなかったため、実際はチェコ各地の映像も組み合わせていたそうですが、とてもそうとは思えない工夫にも恐れ入るものがあります。

ともかく、「世界各地の観光気分を味わいながらも、巻き起こるのは殺し屋たちの血で血を洗う殺し合い」というギャップも『ジョン・ウィック』シリーズの魅力。さらには、暗めの室内でも青く輝く、ある種の「ネオン」的な背景での戦いもスタイリッシュです。
そうしたルックでの美しさだけでなく、殺し屋という存在の「儚さ」や、「自分が生きる道を選ぶ」物語にも、確かな「美学」を感じさせます

どこまで行っても殺し屋とは人殺しであり、絶対的に正しい存在であるわけがありません。それでもなお、劇中で告げられる「人は自ら決めた人生を生きる」「過去を奪われても未来を失ってはならない」といった格言は、誰の人生にも通ずる「矜持」として、響くものにもなっていると思えるのです。
バレリーナ
(R), TM & (C) 2025 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
ちなみに、今後の『ジョン・ウィック』シリーズは、4作目『ジョン・ウィック:コンセクエンス』に登場した盲目の武術の達人・ケインを主人公にしたスピンオフ作『CAINE』のほか、『ジョン・ウィック』シリーズ5作目や、若き日のジョン・ウィックを描くアニメシリーズも制作され、さらにはラスベガスに『ジョン・ウィック』をテーマにした没入型アトラクションまで導入が予定されているのだとか。

今後の『ジョン・ウィック』シリーズを楽しむためにも、その「入門」としてもうってつけな本作を、ぜひ劇場でご覧になってほしいです。

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
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