3:舞台と物語に感じる「美学」とは?
「アクションがエクストリームになりすぎて、もはや笑ってしまう」領域になっていることが『ジョン・ウィック』(2作目以降の)シリーズの魅力ですが、一方で荒唐無稽な世界観や設定に説得力を持たせる「世界観」を、圧倒的な映像美でも表現しています。
その東欧の街とは、オーストリアの世界遺産である「ハルシュタット」(ハンガリーの「ブダペスト」でも撮影)のこと。氷河湖のほとりにあるのどかな村で、山々に囲まれた風景は、積もる雪も相まって、とてつもなく美しく映っています。丘の斜面にあるハルシュタットは「激しい高低差」もあり、それを生かした「立体的」なアクションも展開されます。 観光シーズンのハルシュタットには数週間にわたって撮影に入ることができなかったため、実際はチェコ各地の映像も組み合わせていたそうですが、とてもそうとは思えない工夫にも恐れ入るものがあります。
ともかく、「世界各地の観光気分を味わいながらも、巻き起こるのは殺し屋たちの血で血を洗う殺し合い」というギャップも『ジョン・ウィック』シリーズの魅力。さらには、暗めの室内でも青く輝く、ある種の「ネオン」的な背景での戦いもスタイリッシュです。 そうしたルックでの美しさだけでなく、殺し屋という存在の「儚さ」や、「自分が生きる道を選ぶ」物語にも、確かな「美学」を感じさせます。
どこまで行っても殺し屋とは人殺しであり、絶対的に正しい存在であるわけがありません。それでもなお、劇中で告げられる「人は自ら決めた人生を生きる」「過去を奪われても未来を失ってはならない」といった格言は、誰の人生にも通ずる「矜持」として、響くものにもなっていると思えるのです。
今後の『ジョン・ウィック』シリーズを楽しむためにも、その「入門」としてもうってつけな本作を、ぜひ劇場でご覧になってほしいです。
この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。



