ヒナタカの雑食系映画論 第183回

過小評価すらされていない超労作アニメ映画『ChaO』を「今」見るべき5つの理由

劇場アニメ『ChaO(チャオ)』を「今」見るべき5つの理由をまとめます。実は「あの有名監督」へのオマージュがあることも重要だったのです。(※画像は筆者撮影)

3:これぞSTUDIO4℃な高密度アニメ。『Dr.スランプ』リスペクトのクセ強キャラは賛否両論?

さらなる重要なトピックは『鉄コン筋クリート』や『海獣の子供』などの劇場アニメで知られるSTUDIO4℃制作ということ。高密度の作画や躍動感のあるアクション描写などが絶賛されることが多く、オリジナル作品である今回はもはや良い意味で「やりたい放題」なほどに「STUDIO4℃らしさ」が表れています。
その1つが「独特の世界観の構築」。例えば、主人公の青年・ステファンの家は「上海フランス租界」の建物を参考に作られており、その生活感が伝わる室内を見るだけで飽きません。現実の上海を「近未来」に仕立てたカラフルな街並みもワクワクできるでしょう。

さらなる大きな特徴は、なんともクセの強いサブキャラクターたち。例えば、「ハンプティ・ダンプティ」を思わせる丸い体をした「シー社長」、小さい体だけどルーペをかざすと眉毛が凛々しい「男前部長」、大きな顔のステファンの叔父・叔母などなど。
青木康浩監督は「たとえば『Dr.スランプ』のように、いろいろなビジュアルの人が混在する世界観にしたい」と、キャラクターデザインを担当する小島大和へオーダーをしていたのだとか。なるほど、等身が極端でほぼほぼ「2頭身」のキャラもいる様は『Dr.スランプ』そのものです。

その上で小島大和は「こういうデザインって通常の作品では絶対に欲しがられないんですよ。もっと“普通のキャラクター”が求められるので。今回はSTUDIO4℃作品だからこそ思いっきり振り切ることができて、キャラクターデザイナーとして本当に楽しい作業でした」とも答えています。このキャラクターデザインや世界観も含めて、『ChaO』は「STUDIO4℃でしかできない」作品になっているのです。
さらなる「STUDIO4℃らしい」のはアクションで、特にクライマックスでは瞬きするのも惜しい、超高密度のアニメーションが文字通りに「押し寄せてくる」快楽を味わうことができました。加えて「音響」も素晴らしく、ここだけでも劇場で体感する価値があるでしょう。

4:実は『少林サッカー』で知られるチャウ・シンチー監督へのオマージュだった

それにしたってキャラのクセが強すぎる『ChaO』ですが、それらの多くは、『少林サッカー』などで知られるチャウ・シンチー監督へのオマージュと思われます。
主人公のステファンという名前からして、シンチー監督の英語名「ステファン・チャウ」が由来と思われますし、ヒロインのチャオも『少林サッカー』でヒロインを演じた俳優ヴィッキー・チャオ(つづりは「Zhao」)から取られているのかもしれません。

さらに、青ひげを生やし、女装をしていて、いつも鼻をほじっている「オメデ大使」というキャラも登場するのですが、これはチャウ・シンチー監督作、例えば『少林サッカー』の美容室の店主などで、俳優リー・キンヤンがよく演じてきたキャラそのものだったりします。
さらには、物語上でも「正当な評価を得られていなかったり、能力をあえて隠していたりする人が、自分たちにできることで、世界や誰かの認識を変えていく」というのはシンチー監督作らしいですし、『少林サッカー』よろしく、文字通りに「ぶっ飛んだアクション」もあります。『ChaO』は物語やアクションでもシンチー監督へリスペクトを捧げているのでしょう。

とはいえ、シンチー監督または香港映画らしい、ギャグやクセ強キャラを詰め込む、ある種の「脈絡のなさ」が、賛否を呼ぶ理由になっているのも事実。そこにハマらない人がいるのも、また当然であるとも思えます。

とはいえ、全てのギャグに意味がないというわけでなく、例えばステファンが「いつも出勤時に中華鍋を頭にぶつける」ことが、後半のとある場面で感動を呼ぶようになっていますし、とあるクセ強キャラが意外な(人によっては戸惑う?)活躍を見せたりもします。それも含めてのある種の「困惑」も、楽しめるとは思うのです。
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主人公・ステファンが「カッコよくない」
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