ヒナタカの雑食系映画論 第183回

過小評価すらされていない超労作アニメ映画『ChaO』を「今」見るべき5つの理由

劇場アニメ『ChaO(チャオ)』を「今」見るべき5つの理由をまとめます。実は「あの有名監督」へのオマージュがあることも重要だったのです。(※画像は筆者撮影)

ChaO
画像は筆者撮影
8月15日より劇場アニメ『ChaO(チャオ)』が公開中です。本作は制作期間7年(構想は9年)、総作画枚数10万枚以上(一般的な劇場アニメは約3万〜4万枚)という「超労作」。アヌシー国際アニメーション映画祭2025では、日本映画としては『この世界の片隅に』以来8年ぶりに、準グランプリに当たる長編コンペティション部門の審査員賞を受賞しました。
その時点でアニメとしてのクオリティーは折り紙付き。一度見ただけでは全てを把握することはできない濃密な表現は、間違いなく映画館で見る価値があります。

その上で、実は急いで映画館で見なければならない作品でもあるのです。

1:もう「1日1回の上映」しかないけど、早く見て!

応援したい作品のネガティブな話題を挙げて申し訳ないですが、本作は興行的に大苦戦どころではなく、とてつもなく厳しい動員となっています。301館という大規模の公開館数にもかかわらず、初週の興行ランキングでは10位圏外。「数人しか観客がいなかった」「貸し切りだった」という報告も複数寄せられています。

8月22日からは、ほとんどの映画館で1日1回のみの上映になるどころか、22日・23日の上映が取りやめになって25日で上映終了とアナウンスされたり、21日の時点ですでに上映が終了した劇場もあるほど。

今ではSNSで絶賛の声やファンアートも多数投稿されてはいるのですが、それでも公開からわずか1週間で見ること自体が難しくなっている緊急事態であり、おそらくは8月28日でほとんどの劇場で上映が終了するでしょう。

後述するように、興行の大苦戦には納得できる理由があるとはいえ、そればかりが注目されてしまうのは惜しく、実際に見てこそ伝わる本作の魅力をぜひ知ってほしいのです。

2:基本的には老若男女が楽しめるラブコメディー。ヒロインのチャオがとにかくかわいい!

本作はアンデルセンの童話『人魚姫』をベースとしたオリジナル作品で、あらすじは「平凡な青年がいきなり人魚王国の姫から求婚される」というもの。

青年と人魚姫との恋愛という点で、当然ディズニーアニメの『リトル・マーメイド』らしくもありますし、「語り手」を初めに用意する作劇は『アラジン』も連想させ、異なる種族との結婚で大騒ぎになるドタバタコメディーという点では『うる星やつら』もほうふつとさせました。海から来た存在と人間の交流を描く日本のアニメ映画という点では、『崖の上のポニョ』『夜明け告げるルーのうた』『バブル』も共通しています。
そんな本作の魅力の筆頭は、ヒロインのチャオが(ほかのキャラクターのクセの強さとのギャップも相まって)とにかくかわいいこと! 「魚」姿の時はまんまるなフォルム、コロコロと変わる表情、素直な性格も全てがキュートで、きっと小さなお子さんからも好まれるでしょう。

そのチャオは「不安な気持ちが残っている時」は魚の姿ですが、水の中または「心を許した相手の前」では人魚の姿にもなります。こちらは、どこかミステリアスな雰囲気をまとう細い目やギザギザの歯も、また異なる(あるいは魚の姿の時とも共通する)魅力に満ちています。
声を担当するのは、実写映画およびドラマ『ゴールデンカムイ』での好演も記憶に新しい山田杏奈。「パクッ」「チラッ」という擬音を口に出す様も愛らしくって仕方がありません。そんなチャオのうれしさと一途さが伝わる、山田杏奈の歌唱にもぜひ聞き入ってほしいです。

クセの強さも多分にある作品ですが、一方で「初めこそ気持ちが分からなかった相手のことを知っていく」ラブストーリーとしては「王道」ともいえる内容ですし、しっかりとした伏線回収もあります。

全体的な雰囲気も明るいですし、チャオのかわいらしさに限らず、万人向けの親しみやすさがある内容であることを推しておきたいのです。また、これまで『マインド・ゲーム』を筆頭に大人向けの作品を手掛けることが多かったSTUDIO4℃が、今回はファミリー向けへシフトチェンジしたことにも、感慨深さがあります。
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『Dr.スランプ』リスペクトのクセ強キャラは賛否両論?
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