教員悲鳴、プールは限界……学校水泳、持続可能な「令和モデル」は?

全国の公立小中学校で水泳授業を廃止する動きが広がっています。プールの老朽化や教員の負担軽減などが理由です。夏休みに入り、今年も水の事故のニュースが絶えません。泳ぎを覚え、自らの身を守る教育はどうあるべきでしょうか。(画像出典:Adobe Stock)

水泳授業のイメージ写真
水泳授業を廃止する動きが広がっている(画像出典:Adobe Stock)
愛知県大府市では、2018年から公立小学校9校の水泳授業を段階的に民間のスイミングスクールに委託し、中学校4校では2024年から実技の授業を座学に切り替えました。他にも岩手県滝沢市や福井県鯖江市、静岡県沼津市、神奈川県海老名市などの中学校でプールを使った授業が取りやめとなりました。最近は夏休みの水泳指導を中止する小学校も増えています。このような動きは今後、加速していきそうです。
 
学習指導要領では、「水泳運動系は生命にかかわることから、水泳場の確保が困難で水泳運動系を扱えない場合でも、水遊びや水泳運動などの心得については必ず指導すること」として、座学も特例的に認めています。ただ、実技の授業がなくなると、必然的に泳ぐ機会は減っていくでしょう。

世界的にも珍しい学校での水泳授業

学校教育で水泳を行っている国は世界的にも珍しいといわれます。日本では学習指導要領により、小学1年から中学2年までが必修となっています。きっかけは今から70年前の不幸な事故にさかのぼります。
 
1955年5月、香川県の高松沖で連絡船「紫雲丸」が沈没し、修学旅行中の小中学生ら100人を含む168人が犠牲になりました。その2カ月後には三重県で女子中学生たちが海岸で水泳訓練をしていた際に溺れ、36人が亡くなりました。
 
痛ましい水難事故を受けて、子どもたちが水泳を学ぶ必要性が高まり、体育の授業に取り入れられるようになりました。1960~1970年代には学校プールの建設ラッシュが始まり、今も約9割の公立小学校にプールがあります。
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水泳授業の継続には多くの課題が
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