「最近、私立高校の合同説明会に中学1年生や2年生、その保護者が目立つようになっています」と語るのは、学習塾「花まるグループ」の進学塾部門「スクールFC」の代表で、受験アドバイザーでもある松島伸浩さんです。
中学生の早期情報収集が目立つ背景
これまでの私立高校の合同説明会といえば、受験を目前に控えた中学3年生が参加するのが一般的でした。しかし、松島さんによると、最近は中学1年生や2年生の姿が明らかに増えているといいます。松島さんは、この変化の理由を「受験環境が変わるときに、自分の子どもが受験するとなると、保護者は不安になります。だから、少しでも早くから情報を集めたいと考えているのだと思います」と分析しています。その大きな変化こそが、2026年度から始まる「高校の授業料無償化」です。
「高校の授業料無償化」がもたらす受験環境の変化
2025年2月25日に自民党、公明党、日本維新の会の3党間で全国的な授業料無償化に向けた合意がなされました。これにより、国公立、私立、通信制を含む全ての高校を対象に、所得制限なしで「最大45万7000円まで」の授業料が支給される無償化制度が始まる予定です。すでに東京都では2024年度から、大阪府でも2024年度から段階的に無償化がスタートしており、これが全国に広がる形となります。
これまで私立高校の高い授業料は保護者にとって大きな負担であり、私立受験を躊躇(ちゅうちょ)する一因でした。しかし、無償化によってこの経済的ハードルが解消され、私立高校の選択肢が大きく広がります。
例えば、これまでは都内在住者に限定されていた無償化が、2026年度からは埼玉県在住者にも適用されるようになります。そうすると、近隣の県からの都内私立高校への進学も増えるでしょう。
これにより、受験競争が激化する可能性があります。もちろん、これまで経済的な理由で私立中学受験を諦めていた生徒や保護者にとっては、高校から私立という新たな可能性が広がることは大きなメリットです。
しかし、松島さんは「高校生活にかかる費用の全てが無償になるわけではありません」と注意を促します。
無償化の対象はあくまで授業料のみであり、入学金やその他の納付金は引き続き必要で、これらは公立高校に比べて私立高校の方が高額です。保護者としては、こうした授業料以外の費用についても早めに情報を得ておくことで、事前に対策を立てることが可能になります。
中学1年生や2年生の段階で合同説明会に足を運ぶのは、このような情報を早期に入手し、今後の選択に備えたいという保護者の意向が反映されていると考えられます。
無償化がきっかけとなり、私立高校への入学希望者が増加し、受験競争がエスカレートしていく可能性は十分にあります。



