大阪万博の最寄り駅が「夢洲駅」となった理由……駅名に「万博」が付かないのはなぜ?

2025年大阪万博の最寄り駅が「夢洲駅」となった理由について、「All About」鉄道ガイドの野田隆が解説する。

1970年の大阪万博には閉幕と同時に姿を消した幻の駅「万国博中央口駅」があった。では、2025年の万博最寄り駅「夢洲(ゆめしま)駅」がそのように名付けられた理由は何か、「All About」鉄道ガイドの野田隆が解説する。
 

(今回の質問)
大阪万博の最寄り駅が「夢洲駅」となった理由は?

(回答)
期間限定の仮設の臨時駅ではなく、万博終了後も恒久的に使用される予定があるからだ。

EXPO70の最寄り駅・万国博中央口駅は閉幕と同時に廃止

千里中央駅
北大阪急行線の千里中央駅
1970年の大阪万博では、会場へのアクセス路線となる北大阪急行電鉄(通称「北急(きたきゅう)」)の駅として「万国博中央口駅」が設けられた。北急には地下鉄御堂筋線が直通していたので、梅田駅から25分ほどの場所にあった(新大阪駅から2つ北の江坂駅までが御堂筋線、その先が北大阪急行線となる)。

しかし、これは仮設の臨時駅で万博終了とともに廃止となり、北大阪急行線は、1つ手前の千里中央駅を少々移設の上、ここを終点とした。2023年に路線は延長され、現在は箕面萱野(みのおかやの)駅が終点となっている。
廃線跡
万国博中央口駅跡。右にある料金所付近に駅があった。手前のコンクリートの軌道は大阪モノレール
廃線となった千里中央駅~万国博中央口駅(3.6km)の跡地には中国自動車道が敷設され、駅跡には中国吹田IC(インターチェンジ)がある。さらに、隣接して大阪モノレールの万博記念公園駅が設置されている。

もっとも、大阪モノレールが開通したのは1990年のことで、万博終了から20年の月日が流れていた。

EXPO2025の最寄り駅は「夢洲駅」に

夢洲駅
万博訪問客でにぎわう夢洲駅
一方、今回の大阪万博のアクセス路線となるOsakaMetro中央線は、万博開催に合わせてコスモスクエア駅から海底トンネルで路線を延長した。新設された夢洲駅が終点であり万博会場の最寄り駅となった。

海底をトンネルで抜けるなど難工事と巨額の費用をかけているので到底仮の路線ではない。万博終了後は夢洲にカジノを含む統合型リゾート施設を造る計画があるので、そのアクセス路線として機能することとなろう。
400系夢洲行き
OsakaMetro中央線の夢洲行き電車(400系)
わずか半年で終わる万博のために駅名を「大阪万博駅」「万博東ゲート前」などとすれば、終了後は直ちに変更する必要があり、その作業には莫大なコストがかかる。

路線図やきっぷの駅名表示などはもちろん、終着駅なので電車の行き先表示にも影響が生じる。また、将来に向けて夢洲の地名をアピールする必要もあるので、完成前の「新桜島駅」という仮称を変更して「夢洲駅」で落ち着いたようだ。
案内掲示
OsakaMetro駅構内の案内掲示
実際に筆者も万博会場に行くためにOsakaMetroを利用したが、乗換駅などの要所要所には「万博EXPO(中央線 夢洲駅)」の案内表示が目立つように掲出されており、案内の係員も多数立っているので迷うことはないだろう。
 
大阪・関西万博ぴあ (ぴあMOOK)
大阪・関西万博ぴあ (ぴあMOOK)
 
この記事の筆者:野田隆
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。近著に『シニア鉄道旅の魅力』『にっぽんの鉄道150年』(共に平凡社新書)がある。
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