教師の偽アカウントをつくり、わいせつDM…生徒の「教師いじめ」や「トンデモ保護者」衝撃の実態

教師不足の原因は何か。現役教師の教員ブラックさんに「トンデモ保護者」や子どもの信じがたい教師いじめの実例を交えて、実態をお聞きしました。(画像:PIXTA)

巧妙化している? 子どもによる最新の教師いじめとは

——一方、ニュースでは教師の行き過ぎた指導が話題になっていますが、子どもから教師に対する問題行動などを見たり聞いたりされたことはありますか?
 
「一番印象に残っているのは、中学校で起こった『生徒が教師の偽アカウントをつくって悪用した』ケースです。生徒がある男性教師になりすました偽のSNSアカウントをつくり、同校女子生徒のアカウントにわいせつなダイレクトメールを送りつけるという事件がありました。
 
この一件で男性教師は心身ともに追い詰められて退職してしまいましたが、当該生徒は管理職からの指導にとどまっていました。人の尊厳を傷つけるような、警察沙汰になってもおかしくないレベルの話だと思いましたが、学校として穏便に済ませようとしたようです」
 
——それは大変な事件ですし、結果的に生徒は守られ、被害者である先生は守られなかったということですね。子どもたちからのターゲットになってしまう先生にはどのような傾向があるのでしょうか。
 
「やはり、若くて生徒に対して強く指導できない、優しい教師がターゲットになってしまうケースが多いです。

本件でターゲットになった男性教師も、普段からあまり子どもたちに厳しく指導するということはない方だったので、ある意味子どもに『この先生なら叱られないかも』と思われてしまったのかもしれません。
 
厳しい話かもしれませんが、やはりいろいろなことをくぐり抜けてきた中堅以上の教師のほうが、生徒からの反発には耐性があると思います。こればかりは経験を積んでいくしかないのかなと思います」 

——教員ブラックさんご自身は、子どもからの反発や教師いじめのようなご経験はありますか。
 
「僕も中学校勤務時代、ある女子生徒のターゲットになったことがありました。

4月、新しい学年が始まったクラスの中に、あまり態度がよくない女子生徒が1人いました。僕が話しかけてもちゃんと返事をしない、いわゆる反抗的な態度だったんですね。

なぜだろうと思ってその生徒のことを他の先生によくよく聞いてみると、彼女は小学校時代、学級崩壊したクラスにいたらしく、その状況に教師を追い込んだ中心人物だったのだそうです。

その前情報をもった上で家庭訪問の際に『お子さんのクラスでの態度があまりよくないのですが、何か心当たりはありませんか』と保護者に聞くと『先生が、小学校時代に学級崩壊したクラスの担任に似てるみたいですよ』と返ってきました。

そもそも僕と以前の担任の顔が似ているかどうかは女子生徒の今の態度に全く関係ないし、保護者でありながらまるで他人事のような言い方だったことに驚きました。『ふーん、大変かもしれないけど、先生頑張ってね』とでも言うような反応でしたから」
 
——その子とは、結局1年間どのように過ごしたのですか?
 
「最初はよくない態度が続いたので、僕も厳しく指導することがありました。僕を孤立させて辞めさせようとしたのか、周りの生徒を『先生いじめ』に扇動しようとするんですよ。しかし、幸いにもほかのクラスメイトがそれに乗らなかったため、反対に彼女自身が少しずつ孤立するようになってしまいました。

1〜2学期とそのような状況が続きましたが、彼女自身が考え方を変えたか居心地が悪くなったのか、3学期には僕に一番話しかけてくるようになっていました。
 
このケースの場合、問題解決にほぼ1年かかったわけですから、同様の態度を取られて耐えきれなくなる先生は多いと思います」

子どもの問題行動に無関心な保護者ほど、教師を追い込んでいる?

——正直、教員ブラックさんは先ほどお聞きした「ターゲットになりやすい」先生の条件に当てはまるようにはあまり見えません。その女子生徒はなぜそのような態度を取っていたと思いますか。
 
「ただただ『あいつのことが気に入らないから困らせてやろう』くらいの気持ちだったのだと思います。子ども同士のいじめも、ターゲットになる子がコロコロ変わるじゃないですか。本当に深い意味がなく『あいつが病んで辞めたら面白いな』くらいの感覚だったのではないでしょうか。
 
実は、こういうケースは決して珍しくないんです。特に思春期の中学生は教師や親に反発したいという気持ちからこのような行動に出てしまうこともあるのでしょう。

僕は小学校ではクラス担任をしたことがないので分かりませんが、小学校と中学校の学級崩壊や教師の休職の原因は、異なるところにあると感じています。中学校ではこうした思春期特有の反発心が動機になっていることが多いと思いますね」
 
——先ほどの女子生徒のケースでは、あまり保護者の方が学校側に協力的ではない印象を受けましたが、「子どもの問題行動」と「保護者の対応」との関連について、何か感じることはありますか?
 
「これはあくまで僕の感覚ですが、トラブルを起こす子どもの保護者は、子どものことについて学校任せ、無関心などの傾向があるように思います。

先ほどの女子生徒のケースも、保護者がもう少し学校での子どもの様子に関心があれば『私からも話をしてみます』などの反応が返ってくると思うのですが、一切そのようなことはありませんでした。
 
学校の対応だけでは限界がありますから、結果的に子どもの問題行動が収まらない、そしてそれが長引くと、保護者からは『あの先生は頼りない』などのレッテルを貼られるという悪循環になってしまうのかなと思います」
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