保護者といい関係を築くためには、まずは目の前の子どもと向き合うこと
——ここまでお話しいただきましたが、ご自身が保護者や子どもたちと関係を築いていく上で、大切にしていることはありますか。「僕は保護者との関係づくりに関して、特に意識していることはありません。どんなに保護者にこびを売ったところであまり意味がないと感じています。
ではどのように保護者からの信頼を得るかというと『子どもたちとの関係をしっかりと築く』。これ以上のことはないと思います。保護者の教師へのイメージは、子どもからの情報によるものがほとんどです。
学校からの連絡事項のやりとりなどをしっかり行うのは前提として、それ以外で保護者に特別何かをするというよりも、子どもにとって誠実であることが一番の関係づくりになるのではないでしょうか」
——子どもと誠実に向き合うとは、具体的にどのようなことでしょうか?
「僕は『建前の指導は行わない』ということを大事にしています。例えば、学校生活の中ではどうしても大人の都合で指導しなければならないことがありますが、納得できていない様子の子どももいます。そういう子どもたちの態度や表情を見逃さずにケアできるかどうか、というところが大事だと思います。
授業でも、こちらが説明しても子どもたちがあまり理解していない雰囲気の時に、それを察知してもう一度分かりやすく説明できる先生、気付かずに次へ進んでしまう先生がいます。やはり前者の先生のほうが子どもたちからの信頼も高まるし、『◯◯先生の授業は分かりやすい』と子どもから聞けば、保護者も『あの先生は頼れる』という印象をもつようになりますよね」
——それはつまり、『子どもたちの様子をしっかり見取る力』と言い換えられますか?
「はい、こうした『見取る力』をもともともっている先生もいれば、経験を積み重ねることによって少しずつ会得していく先生もいます。一方で、何年教師をやっても、子どもからの反応に疎い先生がいることも事実です。少し厳しい言い方になりますが、そこは向き不向きがあるのだと思います。
これを読んでいる先生で保護者対応や子どもとの関係づくりに悩んでいる方がいたら、あれこれ悩まずに、まずは今一度目の前の子どもにしっかりと向き合ってみるのが解決の糸口かもしれません」
毎日の授業準備、保護者対応、校務分掌などさまざまな対応に追われる教師の仕事ですが、その中で保護者や子どもとのトラブルや不和を招かないためには、目の前の子どもとの関係づくりが何よりも重要と話された教員ブラックさん。
現在、子どもたちの非認知能力(コミュニケーション能力や自制心など、数値では測れない力)の育成に注目が集まっていますが、それは教師という仕事にこそ求められるものなのかもしれません。
教員ブラックさん プロフィール
教師として学校現場で働く傍ら、リアルな学校現場の様子や業務改善につながる情報をSNSなどで発信中。
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この記事の執筆者:大塚 ようこ
子ども向け雑誌や教育専門誌の編集、ベビー用品メーカーでの広報を経てフリーランス編集・ライターに。子育てや教育のトレンド、夫婦問題、ジェンダーなどを中心に幅広いテーマで取材・執筆を行っている。