
4月5日に報道された埼玉県川口市に暮らすクルド人の状況を取材したドキュメンタリー番組『フェイクとリアル~川口 クルド人 真相』の内容が偏っていると指摘され予定していた再放送が延期、NHK公式Webサイトの見逃し配信も非公開とされた。NHKの定例記者会見で幹部が「偏向報道」などの批判があることを認めている。
またクルド人を巡っては、さいたま市でクルド人の新年を祝う伝統の祭り「NEWROZ(ネウロズ)」が3月23日に開催された際、クルド人を批判する地元の市議会議員らが抗議したことがニュースになっている。
クルド難民問題はSNSなどでも大きな話題になっており、クルド人側はSNSなどでデマが拡散されていると指摘する。ただ不思議なのは、なぜクルド人がここまで目の敵にされているのか、だ。
クルド人はなぜ「叩かれる」のか
というのも、出入国在留管理庁による統計を見ると、2024年、日本には376万8977人(前年末比35万7985人で10.5%増)の在留外国人が暮らしており、過去最高を更新している。その国籍別の内訳を見ると、トップは中国で、2位はベトナム、そして韓国、フィリピン、ネパールと続く。クルド人の出身地であるトルコは「その他」に含まれるほど数が少ない。事実、日本に暮らすクルド人の数は2000人ほどと言われている。にもかかわらず、その存在に脅威を感じている人は少なくないようだ。
クルド人とほかの在留外国人の最大の違いは、クルド人の多くが難民申請を行って日本に来ていることだ。しかも難民申請が却下されても日本に残り、繰り返し難民申請を行う。その間、難民申請中という立場で日本で働いている。
クルド人が叩かれる理由はここにある。まず日本の難民制度を「悪用」しているとも見られていることだ。トルコ国籍のクルド人はこれまでに、ほとんど日本で難民認定されていない(例外的に、過去に1人だけ認めている)。にもかかわらず、産経新聞によれば、「令和6年に難民認定申請した外国人約1万2千人のうち、2回以上の複数回にわたって難民申請を繰り返した人は1355人で、このうちトルコ国籍者が半数近くを占めた」という。
つまり、難民申請を“乱用”していると言えるのだ。そして審査には何年もかかるため、その間は日本に滞在し続けることができる。
難民ではなく“出稼ぎ”が目的?
2024年6月には、出入国管理及び難民認定法が一部改正され、難民申請が3回目以降の人を強制送還の対象とすることになった。当時すでに、難民申請後などで不法滞在者とし強制送還の手続きを受けているトルコ人は1098人に上っていた。ところが2024年末までに3回目以降の難民申請者のうち17人しか強制送還になっていない。またクルド人がこの難民制度を使って、身の安全のためではなく、日本に「出稼ぎ」に来ているという話も出てきている。2004年に、出入国在留管理庁(当時は法務省入国管理局)がクルド人について現地で実態調査を行い、クルド人の難民申請が「出稼ぎ目的だった」との報告書をまとめていたことが判明している。
さらにそうした状況にあるのに、一部がかなり派手な暮らしをしているともSNSで取り上げられており、加えて、日本人に対する事件なども発生し、クルド人が暮らす埼玉県川口市などでは現地の治安が悪化しているとの声もある。2023年にはクルド人同士の揉め事から、「川口市立医療センター」周辺にクルド人約100人が駆けつける騒ぎとなり、機動隊員らが出動する事態になっている。
2025年2月には、石破首相がクルド人の問題について「ルールを守らない外国人と共生はできない。そのような方々に日本にいていただかないようにするのは日本国の責務だ」「わが国で在留が認められないものについて迅速な送還を実施する」とも述べている。