ヒナタカの雑食系映画論 第159回

映画『アマチュア』『ベテラン』『プロフェッショナル』がまさかの同日公開! それぞれの見どころは?

同日公開となった映画『アマチュア』『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』『プロフェッショナル』を一挙レビューします!(※画像出典:(C)2025 20th Century Studios. All Rights Reserved. (C) 2024 CJ ENM Co., Ltd., Filmmakers R&K ALL RIGHTS RESERVED (C) 2024 CJ ENM Co., Ltd., Filmmakers R&K ALL RIGHTS RESERVED)

3:『プロフェッショナル』

数多くのアクション映画に出演してきたリーアム・ニーソン主演作であり、その最高傑作とも評されています。邦題からは痛快アクションを思わせるかもしれませんが、実際は「滋味(じみ)深い」「激シブ」といった言葉がピッタリと合う作風でした。
 

物語の舞台は1970年代の北アイルランドで、元暗殺者の主人公は、その血塗られた過去を捨て去ろうと引退を決意するのものの、その矢先に凄惨(せいさん)な爆破事件を起こしたテロリストが町にやってきたために、壮絶な死闘が幕を開けてしまいます。
プロフェッショナル
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町の人々のささやかな交流や、仕事での腐れ縁のような人物からの提言などがあるからこそ、主人公の人殺しの過去からも、また戦いに赴く宿命からも逃れられないという悲哀が見えます。序盤の「これまで」も含めた関係性を丁寧に積み上げていく様は『イコライザー』を思わせましたし、アイルランドの荒涼な風景の中で危うくも愛おしいドラマが紡がれる様は『イニシェリン島の精霊』を連想しました。
プロフェッショナル
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監督のロバート・ロレンツは、クリント・イーストウッド監督の名作の多くでプロデューサーを務めており、本作も洗練された画や、西部劇を思わせる緊張感なども含め、イーストウッド作品のような趣きも感じさせます。主人公が抱えたジレンマや「贖罪(しょくざい)」、そのほかのキャラクターそれぞれに「理由」が見えてくること、やはりドラマ部分こそに力を入れている作品といえるでしょう。
プロフェッショナル
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そして、本作の原題は『In The Land of Saints and Sinners(聖人と罪人の国で)』です。その言葉通りの皮肉と悲哀に満ちていながらも、一瞬の判断で生死が分かれるアクションとの緩急の付け方も見事で、重々しくなり過ぎず、しっかりとしたエンタメに昇華されているのも美点でしょう。

ほかにもアクション映画が超大渋滞!

4月11日より、「そんなにいっぺんに公開されても追いつけないって!」と、映画ファンからのうれしい悲鳴が上がりそうな、注目のアクション映画がほかにも公開されています。

・『A LEGEND 伝説』:主演のジャッキー・チェンと『カンフー・ヨガ』のスタンリー・トン監督とのタッグの新作。秘宝を巡った過去と現在、夢と現実が交差した物語が展開するそうです。
 

・『サイレントナイト』:『男たちの挽歌』や『フェイス/オフ』のジョン・ウー監督最新作。愛する息子の命を目の前で奪われ、声を失った男の復讐劇を全編セリフなしで描いているとのこと。R15+指定です。
 

・『ゴーストキラー』:『ベイビーわるきゅーれ』の阪元裕吾監督が脚本を手掛け、同作でアクション監督を務めた園村健介がメガホンを取り、さらに同作で主演の高石あかりが殺し屋の幽霊にとりつかれてしまう女子大生に扮(ふん)しています。

※高石あかりは「はしごだか」が正式表記
 

さらに、絶賛に次ぐ絶賛の口コミ効果により、ロングランが続き興行収入は3億円を突破した『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』の豪華声優陣による日本語吹き替え版も4月11日より全国公開されています。その吹き替え版はティ・ジョイ系列の劇場で先行公開されており、もちろん吹き替えも含めて大評判なので、こちらも見たい……!
 

そんなわけでアクション映画が大渋滞という言葉でも足りないくらいなのですが、なるべく多くに足を運んでほしい、目いっぱい楽しんでほしいところです。

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
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