どうする学校?どうなの保護者? 第29回

まるで脅し? PTA非会員家庭の子ども差別「登校班から外れてもらう」「記念品をあげない」圧力も

PTAの経験談について保護者にアンケートを取った結果、PTAには“理不尽な慣習”がいろいろあることが分かりました。ここでは、『さよなら、理不尽PTA!』(大塚玲子 著)から抜粋し、「非会員家庭の子ども差別」について取り上げます。

PTAには“理不尽な慣習”があります。PTAの経験談について保護者にアンケートを取ったところ、「非会員家庭の子ども差別」にまつわる次のようなエピソードが挙がりました。

※本記事は『さよなら、理不尽PTA!』(大塚玲子 著)を一部抜粋したものです。
さよなら、理不尽PTA!
さよなら、理不尽PTA!

退会届を提出したら「子どもがPTA主催のイベントに参加できなくなり、配布物をもらえなくなるが、いいか?」と言われた。(にゃんまげさん)

総会で、任意の告知や入会届の導入を求め、強制をやめるよう提案した。却下され続け、翌年度は退会の意思を会長に伝えると「退会はできない」と言われた。3回目でやっと認められたが、退会を周囲に言わないよう口止めされた。(ちゃーさん)

入らないと担任の先生に伝えたら「原則全員参加」と言われた。(ゆらころりさん)

それは脅しでは……「非会員家庭の子ども差別」

「非会員家庭の子どもには不利益がある」と言われるケースも(画像出典:pixta)
「非会員家庭の子どもには不利益がある」と言われるケースも(画像出典:pixta)
一昔前と比べるとPTAが任意加入、つまり入会も退会も自由であることはだいぶ知られるようになり、最近は非加入を選択する人も増えてきました。でも実際のところ、ほとんどのPTAにはまだまだ「やめづらい空気」が漂っています。

「退会する」「入らない」と伝えると、会長や役員さんから「非会員家庭の子どもには不利益がある」と言われてしまうケースも、いまだにあります。「子どもに配る卒業記念品をあげない」「登校班から、はずれてもらう」などと言われ退会をあきらめた、という話も、なかなかなくなりません。

しかし、PTAはその学校に通うすべての子どものための団体ですから、このような対応は不適切です。そもそも会員は保護者や教職員であって、子どもは会員ではありませんし、保護者が会員か非会員かで子どもの扱いを変えるのは、PTAの趣旨に反します。公共性のない団体が学校という公共施設を優先的に使うことには問題があるでしょう(※)。

たとえば「読み聞かせサークル」の保護者たちが、メンバーの家庭の子どもだけ集めて図書室で読み聞かせをしていたら? 「おやじの会」が、会員家庭の子ども限定のイベントを学校の校庭でやっていたら? 「何それ」と感じる人がほとんどではないでしょうか。少なくともそれは、学校の敷地内でやることではないはずです。

もし記念品などモノを配るなら、保護者が会員かどうかにかかわらず、すべての子どもに配る必要がありますし、もしそれができないなら、最初からモノは配らなければよいのです。欲しくない品をもらうより、自分で好きなものを買いたい人もいます。

これまで長い間、PTAは全員強制加入だったため、会員家庭のための団体だという誤解が根強いですが、本当はPTAは任意加入であり、且つその学校に通うすべての子どものための団体であることを、みんなが理解する必要があるでしょう。

そもそも教職員の会員は、その学校に自分の子どもが通っていなくても、会費を払っています。また、各地の教育委員会やP連が発行した手引きや通知も、非会員家庭の子どもが不利益を受けることがないよう、配慮を求めています。

※学校教育法 第百三十七条:学校教育上支障のない限り、学校には、社会教育に関する施設を附置し、又は学校の施設を社会教育その他公共のために、利用させることができる。

理不尽PTAは教職員もツライよ

PTAにおける「T」=教職員の立ち位置のハンパさも、難しい問題です。教職員も保護者と同様に強制加入が多く、会費は払っているものの、活動に参加することも役員になることも、想定されていません(管理職や担当の教職員を除く)。そのわりに、多くのPTAの活動時間は、教職員の都合に合わせて「平日日中」です。

PTAが行う学校への「寄付」には、教職員が払った会費も含まれますが、これもおかしな話です。スリッパだのパイプ椅子だの、勤務先の備品の購入のため、従業員がお金を払わされているような状態です。

役員さんからはよく「先生たちも会員なんだから、もっと手伝ってほしい」という声を聞きます。学校によっては、たくさんの「お手伝い」を求められる役員さんもいるので、「先生たちが何もしないのはズルい」と感じるのもよくわかりますが、PTAは教職員も任意です。やらない人を泥沼に引きずり込むより、自分たちが「お手伝い」を頼まれたとき、断るのがスジでしょう(心苦しいかもしれませんが、それでも)。

保護者も教職員も、いっしょにラクになる方向を探りたいものです。

PTAを「やめたい」「変えたい」――そう思っている方へ

拙著『さよなら、理不尽PTA!』は、「PTA改革の手引き」となることを目指して書いたものです。

「PTA改革」とは、PTAの仕組みを、泣く人が出ないように変えること。つまり、加入から会費徴収、活動まで、強制をやめて任意にすることです。本質的には「会員の意思を尊重した運営にすること」だと、私は思っています。

是非、この本を参考にしてもらえたら幸いです。  大塚 玲子 プロフィール
ノンフィクションライター。主なテーマは「PTAなど保護者と学校の関係」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』ほか。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。
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