3:知っておいてほしい用語と選挙のルール
『教皇選挙』の原題および劇中で行われる選挙は、日本人でも聞いたことがある人が多いであろう「コンクラーベ」。750年以上も続く、ローマ教皇の死去または辞任後に執り行われる選挙のことで、ラテン語では「鍵と共に」の意味があるそうです。それ以外にも、劇中に特に説明がなく字幕で表示される単語がいくつかあるので、プレス資料から一部引用、補足をする形で記しておきましょう。
さらに、劇中の選挙のルールも知っておくといいでしょう。・カトリック教会……キリスト教最大にして最古の教派。カトリックの総本山バチカンはローマにある世界最小の独立国で、宗教機関と国家の両面を併せ持つ。世界のカトリック信徒数は13億人以上とされている
・使徒座空位(しとざくうい)……カトリック協会のトップである教皇が不在の状態
・枢機卿(すうききょう)……教皇に次ぐ高位聖職者で、教皇の最高顧問
・猊下(げいか)……高位の聖職者に対する敬称
・聖マルタの家……選挙期間中、枢機卿が宿舎として使用できるように建設された。食堂、会議室、聖堂を備えているが、各室にテレビはない
・秘密投票の互選(関係者の中で役職に就く者を互いに選び出すこと)である。
・規定の有効得票数は投票総数の2/3以上。それを得る人物が出るまで繰り返される。
・会場は盗聴対策を万全に施したシスティーナ礼拝堂で、その煙突から白い煙が出れば選出決定、黒い煙なら未決を意味する。
劇中の3日間において、そのルールにのっとった選挙がどのように進行していくかに注目すると、さらに面白く見られるでしょう。
4:「世界最古の家父長制」をセリフだけでなく画でも示している
本作では枢機卿の男性たちだけでなく、神と教会に献身的に仕えることを誓うシスターも登場します。カトリック教会は女性が聖職者になることを認めておらず、劇中でシスター・アグネスという人物が自らを「目に見えぬ存在」と語る場面もあります。
つまりは、「世界最古の家父長制」ともいわれるカトリック教会の現実をセリフとして、さらには視覚的にも示しているというわけです。男性中心のコミュニティーの中での女性の境遇の問題は日本でもまったく他人事ではありませんし、劇中で明かされる「スキャンダル」への「言い訳」も含めて、つい最近大きく報道された問題にも通じていると思う人は多いはずです。

5:ネタバレ厳禁の衝撃の展開も
最後に、本作において最も重要なことを告げておきましょう。この作品は二転三転するスリリングな展開こそがエンタメにもなっている作品であり、特に結末は「ネタバレ厳禁」かつ「ネタバレを踏んでしまいやすい」ため、なるべく早めに見てほしいということです。なぜネタバレ厳禁かつ踏みやすいのかの理由を説明すると、それ自体がネタバレになってしまうのでもどかしいのですが、観客が受ける衝撃が、ローレンスの複雑な感情とも一致していること、今まさに世界で、特にアメリカで議論されていることだった、ということも告げておきましょう。

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。