「初めまして」で盛り上がる話題
それではフランスの人々は、初対面でどのような話題を持ち出すのでしょうか。一番多いのは、「仕事」に関する話題だと言えるでしょう。女性の就業率が9割近いフランスでは、男女を問わず職業に対する関心が非常に高く、病院の医師からも年齢より先に「どんな仕事をしているの?」と尋ねられるほど。求職中の場合でも、やりたいことが明確であれば、話題として盛り上がりやすいテーマになっています。
また、容姿に関する話題はNGですが、洋服やアクセサリーなど身に着けているものを褒めることはよくあります。好きなファッションスタイル、音楽、映画、あるいはそれに関連する趣味について尋ねるのも問題ありません。
さらに個人的に多いと感じるのは、「行って良かった旅先」や「旅先で食べたおいしいもの」の話。フランスでは夏のバカンスを長めに取る習慣がありますので、情報交換として旅行の話題を持ち出すことが多いのです。
相手の出方によって話すケースも
ただ、話す内容は相手の様子に合わせることが大切かもしれません。前述の通り、フランス人は原則として出身国を尋ねることはありませんが、例えば相手が「ベトナム旅行が素晴らしかった」と話してきた際には、「実は私はベトナムがルーツなんです」と打ち明けることもあるでしょう。自分から尋ねなくても、相手の話題に自然に乗ることで会話が盛り上がったりします。とはいえ、相手の出方をうかがう姿勢に関しては、フランス人の方が日本人以上に慎重です。会話をしていても「言葉を選ぶ」人が非常に多く、初対面では日本人よりも距離を取るケースが多い印象を受けました。
共通点を見つけることが初対面の会話の目的ではありますが、どこまでがOKで、どこからがNGなのかは、その国の文化や背景が色濃く表れる部分なのかもしれません。
この記事の筆者:大内 聖子 プロフィール
フランス在住のライター。日本で約10年間美容業界に携わり、インポートランジェリーブティックのバイヤーへ転身。パリ・コレクションへの出張を繰り返し、2018年5月にフランスへ移住。2019年からはフランス語、英語を生かした取材記事を多く手掛け、「パケトラ」「ELEMINIST」「キレイノート」など複数メディアで執筆を行う。