ヒナタカの雑食系映画論 第146回

映画『嗤う蟲』は深川麻衣の「目力」がスゴい。まさかの「田舎がイヤだ映画」が5本も同日公開!?

深川麻衣、若葉竜也、田口トモロヲの実質的にトリプル主演といえるスリラー映画『嗤う蟲』の魅力を解説します。いい意味での「田舎がイヤだ」映画であり、類似ジャンルの映画がまさかの複数同日公開されていたのです。(C)2024映画「嗤う蟲」製作委員会

嗤う蟲
『嗤う蟲』1月24日(金)より新宿バルト9ほか全国公開 (C)2024映画「嗤う蟲」製作委員会
1月24日よりスリラー映画『嗤う蟲』が公開中です。

本作のあらすじは、スローライフに憧れて都会から村へと移住してきた若い夫婦が、初めこそ静かな暮らしを満喫するも、やがてその場所の恐ろしい「掟(おきて)」を知り、もう戻れない「生き地獄」へと足を踏み入れてしまうというもの。端的に言えば、いい意味で「田舎がイヤだ映画」系譜の最新作です。

とはいえ、本作は陰惨で人を選ぶ映画というほどでもなく、なかなか親しみやすい作風でもあります。「こういうことあるよね」と納得してしまう「田舎のイヤなところあるある」を前提に、ハラハラドキドキのサスペンス、さらには爆笑もののブラックコメディー的な要素を備えていたりもするのですから。

なお、PG12指定がされていますが、その理由は「違法薬物吸引の描写がみられる」からであり、直接的なエログロ描写はほぼないのでご安心(?)を。さらなる魅力を記していきましょう。

初めは常識的で良い人だと思えたのに……が怖い

本作でまず面白いのは「ちょっと距離感が近いけどフレンドリーな村民たち」とのコミュニケーションの過程です。おすそ分けを振る舞ったり、何かと世話を焼いてくれるし、自治会の存在を話しつつも「無理に入らなくてもいい」と強制してもこないし、「なんだ、常識的で良い人たちじゃないか」と、“初め”は思えるのです。
嗤う蟲
(C)2024映画「嗤う蟲」製作委員会
しかし、「子作りは頑張っとるだか」「早い方がいい」などとやたらと子どもを産むことを求めてくる上に、果ては引っ越し祝いと称して妊娠検査薬を渡してきたりもします。SNSよりも早く自分たちの情報が拡散されている状況に、主人公の夫婦は「田舎、恐るべし」とあくまで軽く笑い合うのですが……次第に「笑えない」状況に陥ってくるのです。
嗤う蟲
(C)2024映画「嗤う蟲」製作委員会
ぜひ恐れ慄いてほしいので詳細は秘密にしておきますが、住んでいる家に対してとある嫌がらせ(?)をされたり、それに伴って村民へのパワハラも横行していることが分かったり、さらには村で「何か」が行われていることも徐々に明らかになって……その不穏さが積み重なった先で、夫はとある決定的な「弱み」を握られてしまうのです。
嗤う様
(C)2024映画「嗤う蟲」製作委員会
スキあらば子作りをすすめてくる村民たち、村で行われていた「何か」、そして決定的な「弱み」、それぞれは客観的にはやや現実離れしているようでいて、根底にはやはり「こういうことは田舎や閉鎖的なコミュニティーでは起こり得る」と、多くの人が想像できるからこそ恐ろしく思えることでしょう。
嗤う蟲
(C)2024映画「嗤う蟲」製作委員会
ちなみに、城定秀夫監督は『アルプススタンドのはしの方』や『女子高生に殺されたい』などで映画ファンからの評価も高く、その作品群は「“普通”からはみ出てしまった人物が異なる価値観や場所で成長また変質していく」ことでほぼ一貫しているという確かな作家性があり、本作でも例外ではありません。

さらに、脚本を担当したのは、『ミスミソウ』『許された子どもたち』などを監督として手掛け、人間の悪意をたっぷり込めた「地獄巡り」のような作風が絶賛されてきた内藤瑛亮。この2人のタッグでこそ、「ムラ社会のダークサイドを容赦なくえぐるヴィレッジ〈狂宴〉スリラー」という触れ込み通りの内容に仕上がっています。
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田口トモロヲ、若葉竜也、深川麻衣のここがスゴい
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