そこで今回は、成人年齢と成人式の2歳のズレがなぜ起きているのか調べてみました。
そもそも成人が18歳になったって知ってた?
法改正された当時、ニュースなどで話題になったので多くの人が知っているとは思いますが、改めておさらいします。明治時代から約140年間、日本の成人年齢は20歳でしたが、民法が改正されて2022年4月1日から18歳に変わりました。
2022年4月1日時点で18歳、19歳の人はこの日をもって成人となり、17歳以下の人は18歳の誕生日から成人に。
携帯電話やクレジットカードを持ったり、部屋を借りたりローンを組んだりといったさまざまな契約が保護者の同意なしで可能になりました。
一方で、健康面への影響や非行防止の観点から、飲酒や喫煙、競馬などの公営競技に関する年齢制限は「20歳以上」のまま変わっていません。
18歳は受験や就活で忙しい! 成人式は「20歳のつどい」に
成人式は「成人を祝う会」ですが、多くの18歳にとって1月は大学受験や就職活動で忙しく、お祝いをする余裕がありません。校則で髪を染められない、パーティーでお酒を飲めないこともあって、大阪府大阪市が高校生を対象にしたアンケートでは約8割が成人式を開催する年齢は「20歳がいい」と回答しました(調査期間:2019~2020年)。
このような状況を鑑みて、現在でも多くの自治体は「20歳のつどい」などに式典の名前を変えて、20歳での開催を継続しています。
そんな中、三重県伊賀市では高校生7500人の反対署名が集まったのにもかかわらず、2023年と2024年に18歳での成人式を強行。取材に対して市長は「これが大人になること」「嫌なことに耐えて大人」などと考えを示しました。
しかし2024年11月に実施された同市の市長選で、この「18歳成人式」が争点となり、「速やかに20歳の式典に見直す」と公約に掲げた稲森稔尚氏が見事当選。
前市長は、この結果も「嫌なことに耐えて大人」と受け入れたのでしょうか……!
成人が18歳になったきっかけは国民投票法
そもそも、成人年齢が18歳になったきっかけは2007年の国民投票法です。国民投票は憲法改正を国会が発議した際に行うことが憲法で定められていますが、投票権年齢については戦後長い間決まっていませんでした。
与野党で協議された結果、憲法改正には多くの国民が参加するべきだとして、投票権年齢は世界標準でもある18歳に定められました。それに合わせる形で公職選挙法と民法が改正され、選挙権年齢と成人年齢も18歳になったというわけです。
成人年齢の引き下げによって選挙権を得た伊賀市の18歳の成人たちが、18歳成人式を強行した市長を選挙で落とす。まさに「これが大人になるということ」なのかもしれません。
ちなみに、成人年齢が引き下がると同時に、逆に引き上がったものがあります。それは女性の結婚可能年齢。改正前までは男性が18歳、女性は16歳でしたが、男女ともに18歳になりました。
明治以来、男女の身体的・精神的な成熟度の違いに合わせて年齢差をつけていましたが、夫婦として共同生活を送る上での社会的・経済的な成熟度を重視すべきという時代の変化、また国連からの要請もあって改正されることになりました。
ただ、もしかしたら「16歳で結婚するはずが突然法律が変わってしまった」という悲劇のカップルがいたかもしれません。どうか今ごろは幸せになっていてほしい……!
というわけで、成人は18歳でも、成人の式典は20歳。どちらもおめでとうございます!
この記事の筆者:石川 カズキ
1984年沖縄県生まれ。筑波大学人間学類卒業後、会社員を経て芸人・作家・コピーライターに。エレキコミック・ラーメンズを輩出した芸能事務所トゥインクル・コーポレーション所属。第60回宣伝会議賞コピーゴールド受賞、LOFT公式YouTubeチャンネル「コントするイシカワくん」シリーズのコント台本・出演、KNBラジオCMコンテスト2020・2023協賛社賞受賞など。お仕事があればお気軽にご連絡ください。AIから仕事を奪うのが目標です。