パリの「観光地価格」は高すぎる。26歳以下の若者は優遇されるも、強気な「二重価格」に批判の声

現在、ヨーロッパ各地でオーバーツーリズムが問題視されています。その中でも、長年「世界一の観光地」として知られるフランス・パリでは、「観光客価格」と呼ばれる高めの価格設定が存在し、近年さらにその傾向が強まっています。

「観光客の多いところには行かない。混んでるし、高いから」。これは、パリに住むフランス人がよく口にする言葉です。外国人旅行者であふれる日本の観光地でも、同じ考えを持つ人が増えてきているのではないでしょうか。

パリの価格設定は、「観光地の雰囲気」そのものへの付加価値を含む

フランスの首都パリは、世界で最も美しい都市の1つと言われています。確かに、セーヌ川沿い一帯には世界遺産に登録されるほど壮麗な光景が広がっていますし、凱旋(がいせん)門やエッフェル塔、ルーブル美術館といった歴史的建造物も、街の至る所に点在しています。

しかし、そうした観光名所の周辺では、カフェやレストランでの価格が非常に高く設定されています。場所によっては、コーヒー1杯が8ユーロ(約1300円)に達することも。飲み物込みのランチ代が30ユーロ(約4890円)を超える場合も少なくありません。これには高額な家賃や人件費、そして「観光地の雰囲気」そのものに対する付加価値が含まれています。

フランス人も避けるパリの観光地

シャンゼリゼ大通り
パリのシャンゼリゼ大通り(写真は筆者撮影、以下同)
観光地価格で有名な場所といえば、凱旋門から広がる「シャンゼリゼ大通り」が挙げられるでしょう。高級ブティックや高級レストランがずらりと立ち並ぶ、パリでも1、2を争う人気観光スポットです。

しかし、2024年にオープンしたシャンゼリゼ大通りの「カフェ・ド・ラ・ローズ・ランコム」では、デザート1品と飲み物のセットがなんと21ユーロ(約3420円)に設定されていました。また、エスプレッソ1杯の価格は6.5ユーロ(約1060円)と、パリ郊外の一般的な価格(1杯2ユーロ、約320円)と比べて3倍以上にもなります。

こうした値段設定は、ルーブル美術館やエッフェル塔、ノートルダム大聖堂付近でも同様です。観光地としてのブランド力、旅行者からの需要の高さが価格を押し上げているのでしょう。さらに一度訪れた観光客は短期間でその場を離れるため、高価格でも消費する傾向があります。パリの観光地では、この「一期一会」的な需要をターゲットにした価格戦略が取られています。

これらの場所を徹底的に避けているのが、現地で暮らすフランスの人々です。そもそもの賃料・食費が高くついてしまう場所なので、旅行者と同じ消費行動はできません。外食する場合は、旅行者の少ない「観光地から外れた店」に通う人が多いようです。

美術館やモニュメントの入場料も大幅な値上げへ

ルーブル美術館
入場者数が世界ナンバーワンのルーブル美術館
パリは文化やエンターテインメントに恵まれた素晴らしい街ですが、物価の高さは美術館やモニュメントの入場料にも影響しています。

例えば、パリのシンボルであるエッフェル塔では、2014年から2024年の間に最上階に行くためのチケット価格が73%も上昇しました。現在の値段は35.3ユーロ(エレベーターでアクセスする場合、約5700円)ですから、大人2人で訪れれば、日本円で1万円以上にもなります。

それだけではありません。2023年にはルーブル美術館の入場券が17ユーロから22ユーロに上がり、凱旋門とヴェルサイユ宮殿、カタコンブへの入場料も2014年比でそれぞれ40%、68%、140%の値上げとなりました。

ところがパリの有名観光地では、フランス人にも観光客と同じ一般料金が課せられています。多くの美術館では「26歳未満のEU市民は無料で入場できる」という特別待遇がありますが、大人のフランス人であれば外国人と同じ料金を支払わなければなりません。

値上げの背景には、エネルギーコストや人件費の高騰、さらには五輪開催といったさまざまな要因があります。しかし現実的には、高すぎる入場料に現地フランスの人々も疲れ切っています。「全てが値上がりしているので驚かないが、うれしくない」「もう行きたくない」と、多くの人々が人気観光地から遠ざかっているのが現状です。
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「外国人と同じ値段を払わなければいけない」フランス人の本音とは
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