スカートに対して「慎重」なフランス
当時は「へえ」と軽く流してしまった筆者ですが、フランスに住まいを移してから、ようやくその言葉の意味を理解することができました。フランスではパンツスタイルの女性が圧倒的に多く、スカート姿の女性をほとんど見かけないのです。ファッションに寛容なイメージのあるフランス。しかし、フェミニンなコーディネートが多い日本に比べると、意外にもバリエーションが少ないのがフランスの現実です。特にスカートに関しては、多くの人が「慎重な姿勢を取っている」といえるでしょう。
フランス人女性の半数以上が、毎日ズボンをはいている
確かにパリの街を歩くと、すれ違うほぼ全ての女性がパンツスタイルに身を包んでいます。特に冬場はその傾向が顕著で、日本で好まれているロングスカートでさえ、ほとんど見かけることはありません。
それは仕事でもプライベートでも同様です。快適だからという理由のほかには、「防寒」や「体型カバー」、さらに「女性の安全のため」といった現実的な問題も含まれています。
女性はズボンを履く権利がなかったフランス
それではなぜフランス女性は、これほどまでにパンツスタイルを好むのでしょうか。フランスにはかつて、「女性はズボンの着用を禁止する」という条例がありました。1800年に制定された古い条例で、「女性らしいファッションを義務付ける=女性は男性と同じように権力を握ってはならない、政治活動には参加させない」ことを意図したものです。
“自由”を何よりも尊重するフランスで、このような条例が存在していたとは驚きですよね。さらに驚くべきことに、同条例が正式に廃止されたのはつい最近の2013年です。
ただし、実際には長年にわたって形骸化しており、フランスの女性たちは既に自由にパンツを履いていました。今では誰も話題にすることのない過去のネタですが、もしかするとフランスの女性たちは「パンツスタイルを選ぶ自由」に対して、日本人よりも強い意識を持っているのかもしれません。