フランス人はなぜスカートを履かないのか。ミニスカートにピンヒールは「娼婦」に見られてしまう?

女性のスカートは季節を問わずに楽しめる、ファッションアイテムの1つです。しかしヨーロッパ、特にフランスでは、スカートに対する認識が日本と少し異なるかもしれません。フランス在住者の視点からその「本音」に迫ってみましょう。

フランス人はなぜスカートをはかないのか
フランス人はなぜスカートをはかないのか
日本を訪れたフランス人の友人を案内していたときのこと。彼女は、「日本の女性ってフランス女性よりスカートをはいているね。靴もすごくおしゃれだし……」と、驚きながらつぶやいていました。

スカートに対して「慎重」なフランス

当時は「へえ」と軽く流してしまった筆者ですが、フランスに住まいを移してから、ようやくその言葉の意味を理解することができました。フランスではパンツスタイルの女性が圧倒的に多く、スカート姿の女性をほとんど見かけないのです。

ファッションに寛容なイメージのあるフランス。しかし、フェミニンなコーディネートが多い日本に比べると、意外にもバリエーションが少ないのがフランスの現実です。特にスカートに関しては、多くの人が「慎重な姿勢を取っている」といえるでしょう。

フランス人女性の半数以上が、毎日ズボンをはいている

パリ5区の風景
フランス女性はパンツスタイルが基本(写真は筆者撮影、以下同)
フランスの調査会社「トルーナ(Toluna)」が2021年に行ったアンケートによると、フランス人女性の10人中8人以上(84%)が、少なくとも週に4日はズボンを履くと答え、半数以上(55%)は例外なく毎日ズボンを履くと答えました。そしてその理由で最も多かったのは、「快適だから」という答えです(フランスに住む18歳以上の女性1054人を対象にした調査)。

確かにパリの街を歩くと、すれ違うほぼ全ての女性がパンツスタイルに身を包んでいます。特に冬場はその傾向が顕著で、日本で好まれているロングスカートでさえ、ほとんど見かけることはありません。

それは仕事でもプライベートでも同様です。快適だからという理由のほかには、「防寒」や「体型カバー」、さらに「女性の安全のため」といった現実的な問題も含まれています。

女性はズボンを履く権利がなかったフランス

それではなぜフランス女性は、これほどまでにパンツスタイルを好むのでしょうか。

フランスにはかつて、「女性はズボンの着用を禁止する」という条例がありました。1800年に制定された古い条例で、「女性らしいファッションを義務付ける=女性は男性と同じように権力を握ってはならない、政治活動には参加させない」ことを意図したものです。

“自由”を何よりも尊重するフランスで、このような条例が存在していたとは驚きですよね。さらに驚くべきことに、同条例が正式に廃止されたのはつい最近の2013年です。

ただし、実際には長年にわたって形骸化しており、フランスの女性たちは既に自由にパンツを履いていました。今では誰も話題にすることのない過去のネタですが、もしかするとフランスの女性たちは「パンツスタイルを選ぶ自由」に対して、日本人よりも強い意識を持っているのかもしれません。
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フランスでミニスカートを履くと……
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