世界を知れば日本が見える 第57回

「民主主義の崩壊」兵庫県知事選、なぜ“陰謀論”が広まったのか。日本が「選挙×SNS」を対策できないワケ

兵庫県知事選挙の結果について、選挙時のSNSの動きに注目が集まっている。今後の日本において、選挙とSNSはどのような関係にあるべきか。(サムネイル画像出典:アフロ)

斎藤元彦
斎藤元彦氏(写真:アフロ)

11月17日に行われた兵庫県知事選挙がまだ尾を引いている。9月30日、パワハラ疑惑などで告発された斎藤元彦知事が、兵庫県議会から不信任を決議されたことで失職。今回出直しで自らの失職に伴う知事選に臨んだ斎藤氏は、結果的に次点の候補者と約14万票の差をつけて圧勝した。

【写真を見る】選挙に“圧勝”した斎藤知事、再選後の言葉

兵庫県知事選挙とSNSの根深い関係

ところが、選挙が終わってからも知事選の余波は残っており、SNSなどでは今も注目の的になっている。メディアが斎藤氏に向けられたパワハラ疑惑を大きく取り上げてきたこともあって、「テレビなど大手メディアは偏向している」と批判の声が上がっているのだ。
 
さらに話題になっているのは、選挙時のSNSでの動きについてである。というのも、対抗馬だった稲村和美氏が、選挙に敗北したのは斎藤氏支持者らがSNSで稲村氏批判を激化させていたことが理由の1つだと主張したからだ。
 
この件について、カンテレNEWSは「兵庫県知事選挙に立候補していた稲村和美さんのSNSが選挙期間中、2回に渡って凍結されました。後援会は、うその通報によって凍結され、選挙活動が妨害されたとして、22日にも刑事告訴する方針です」と報じた。今回の選挙では、話題がSNSの在り方にまで波及している。

そもそも、どのようにしてアカウントは「凍結」されるのか

ただ誤解してはいけないのは、凍結された「稲村和美さんのSNS」というのが、実際には稲村氏のSNSではないということである。あくまで稲村さんの後援会のSNS「いなむらかずみ応援『ともにひょうご』」がその対象であり、稲村氏の公式アカウントである「稲村和美(いなむらかずみ)official」が凍結された事実はない。
 
X(旧Twitter)はアカウント凍結の公式ルールを公開しており、それによれば「安全性」「プライバシー」「信頼性」などで度が過ぎると凍結される、としている。ただ世界的にも、特に政治的な活動をするアカウントを開設・運用する際には、X側も敏感に反応する傾向がある。ちなみに筆者がXの社員から聞いたところによると、Xでは、まずAIの機械学習で自動的にコンテンツやアカウントをチェックし、必要に応じて24時間体制で日本語が分かる人間がチェックを入れているという。
 
Xが公開した2024年の「透明性リポート」によれば、2024年上期にかけて世界で約530万アカウントを停止したことを明らかにしている。とんでもない数をさばいていることから、人間の目でチェックする際にきめ細かな「審査」が行われているかどうかには疑問符がつく。
 
稲村氏の後援会アカウントを見ると、確かに政治的なポストを頻繁に行っている。あるいは、登録のメールアドレスや認証に使う情報などに、Xの規制アルゴリズムに引っかかる要素があったのかもしれないし、ほかの政治的なアカウントとのひも付けもあるのかもしれない。さらには、別のユーザーからXに対して、凍結を促す申し立てがあったとの話もあり、それも凍結判断の要素となっていたのかもしれない。これらの背景から、スパムアカウントと認識された可能性はあるだろう。
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日本で政治活動におけるSNSの対策が難しい理由
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