3:対照的な西野七瀬と高良健吾の夫婦
さらには、二也の不倫相手「美月」(西野七瀬)と、その夫である「志朗」(高良健吾)との対比も重要です。志朗は発達障害の傾向がある息子の世話を美月に任せっきりにしていることをはじめ、「妻と夫の役割」を明確に分けることが当然だという考えを持っていて、はっきりモラハラをしている場面もあります。 友達のように接する一子と二也とはまったく異なる夫婦関係の冷たさがある2人ですが、その関係がどのように変わっていくのか。それぞれの人間としての成長が、西野七瀬と高良健吾という俳優2人の演技から伝わることも大きな魅力になっています。ちなみに、2024年に高良健吾は歌手の田原可南子(田原俊彦の長女)と、西野七瀬は俳優の山田裕貴との結婚を発表するなど、やはり『1122 いいふうふ』の“縁”もまた話題になっていました。
4:夫婦それぞれの適切な距離感や価値観を改めて考えられる
そもそも、「公認不倫」の発端となるひどい言動をしたのは一子ですが、彼女の言葉には正当性もあるし、二也のほうは誠実な言動をしているかと思いきや、言葉の端々に欺瞞(ぎまん)を感じるところがあったりします。前述した美月と志朗も含めて、「夫婦のどちらにも問題もある、だけどどちらの言い分にもまともなところがある」こと、「どちらが悪で善だとか、断定できない」というのも『1122 いいふうふ』の魅力であり、受け手にも「考えさせる」作品だと思えました。それを、俳優の力および映像作品の表現でもって作り上げている点が素晴らしいのです。
有り体に言えば「めんどくさい夫婦関係」を描いた作品でもあるのですが、そこには不倫やセックスレス、さらに母親との確執、不妊治療、育児など、現実の夫婦間にある縮図が反映されています。だからこそ、あらゆる夫婦(あるいは独身でも)が「自分ごと」として捉えることができるのでしょう。
そもそも、「夫婦関係をどのような距離感で続けていくか」の答えはそれぞれで異なります。「一般論としては間違っている」と思えることだって、夫婦の当事者が一緒に考えて、導き出した結論であれば、それでいいのではないか……。物語を通してみて、そのことを(第6話のラストの衝撃的な言葉さえも)肯定していいと思えたのです。
正直に言って、独身者としては「結婚、怖い」と思った部分もありますが……一子の言う「弱ったりとか痛いときに、自分をよく知っている人が一緒にいるのって、こんなにも心強いものなんだね」という言葉に代表されるように、「結婚っていいなあ」とストレートに思えたのもまた事実。自身の価値観や感情を揺さぶられる経験もまた楽しいものです。