本作は「1970年代の深夜のトーク番組」をモチーフにしたオーストラリアの作品で、アメリカの批評サービスRotten Tomatoesでの批評家支持率は現在97%を記録しています(執筆時点)。実際に見ればその高評価にも納得、「テレビ史上最恐の放送事故」を秀逸な手法で描いた快作(怪作)でした。 何も知らずに見ても楽しめる内容ではありますが、後述する奇抜な特徴こそが面白い作品でもありますし、映画ファンや1970年代を経験した人がニヤリとできる要素もふんだんに盛り込まれていることも知っておくといいでしょう。6つの項目から解説します。
1:テレビ史上最恐の放送事故の映像……というフィクション
本作の触れ込みは「1977年のハロウィンの夜。あるテレビ番組が、全米を震撼(しんかん)させた――封印されたマスターテープに映っていた衝撃の映像とは!?」というものです。 つまり、「有名な実際の映像」という体裁の「ファウンド・フッテージ(撮影者が残した映像)」ものの一つです。このジャンルの有名作には『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や『クローバーフィールド/HAKAISHA』などがあり、直近では炎上系配信者を主人公にした『デッドストリーム』も高評価を得ていました。もちろん、本当は完全にフィクション(ただし後述する通り実際の放送事故が作品のトーンを決定づけている)なのですが、実際に見るのであれば、「本当にこういう映像があったんだ……!」という作り手が用意した「うそ」に全力でノってしまうのがいいでしょう。
仮にそういう意識がなかったとしても、後述する映像のこだわりもあって、「あれ……? これは、本物の映像なの?」と錯覚してしまう瞬間があるはずです。
2:PG12指定ギリギリ!? ショックシーンはトラウマ級、または笑ってしまうかも
本作は「肉体損壊・流血の描写がある」という理由でPG12指定がされています。具体的にどういう描写なのかはネタバレになるので秘密にしておきますが、もはや一周回って変な笑いが出てしまうほどの大惨劇が映し出されることは告げておきましょう。 それは、特殊造形とCGI技術のたまもの。1970年代らしい映像にマッチする、レトロかつアナログな趣もあるショックシーンに、ニヤリとするホラー映画ファンは多いはず。監督を務めたコリン&キャメロン・ケアンズ兄弟(以下、ケアンズ兄弟)は、デヴィッド・クローネンバーグ監督の『スキャナーズ』や『ビデオドローム』に影響を受けていたそうで、いい意味で気味の悪い特殊メイクのこだわりには特に似たものを感じられるでしょう。それでいて、グロいシーンの数そのものは多くなく、しつこくもないため、PG12指定止まりであることも納得できました。一方で、溜めに溜めた「フリ」の先でようやく繰り出されることもあり、いい意味でトラウマ級、絶対に忘れられないインパクトがあるはずです。