ヒナタカの雑食系映画論 第123回

『トランスフォーマー/ONE』がシリーズ最高傑作である3つの理由! “小学生の男子”に最も見せたい映画

公開中の『トランスフォーマー/ONE』は老若男女におすすめできる素晴らしい作品でした! その理由を3つの項目に分けて解説しましょう。(※サムネイル画像素材:(C) 2024 PARAMOUNT ANIMATION. A DIVISION OF PARAMOUNT PICTURES HASBRO. TRANSFORMERS AND ALL RELATED CHARACTERS ARE TRADEMARKS OF HASBRO.)

1:敵同士の2人は、かつては仲良しだった……!

まず、本作の最大の魅力は「主人公2人の関係性」だと断言します。彼らは共に労働ロボットとして地下都市で働いている青年で、「変形ができない」ために上官からバカにされたりするも、互いを支え合う親友同士。2024年に大充実していた「バディもの」の1つでもあるのです。
トランスフォーマーONE
(C) 2024 PARAMOUNT ANIMATION. A DIVISION OF PARAMOUNT PICTURES HASBRO. TRANSFORMERS AND ALL RELATED CHARACTERS ARE TRADEMARKS OF HASBRO.
そして、今回は「トランスフォーマーの起源に迫る始まりの物語」と銘打たれており、主人公の1人「オライオンパックス」は、正義のヒーローかつリーダー的な存在の「オプティマスプライム」のかつての姿であること、その親友の「D-16」は、破壊の限りを尽くす宿敵「メガトロン」であることが明かされています。

つまり、他の実写やアニメの『トランスフォーマー』シリーズを(軽めに)知っていると、「ええっ!? 敵同士だったオプティマスプライムとメガトロンって、初めはこんなに仲良しだったの?」と驚くことができる内容になっているのです。

逆に言えば、「ああ……この時は君たちあんなに仲が良かったのに……どうして敵同士になってしまったんだ……!」という切なさを大いに感じられるということです。

『トランスフォーマー』シリーズを知らない人でも、他の漫画やアニメにある「仲良かった2人が敵同士になる」関係性を思い出すことはあるでしょう。

例えば、『ベルセルク』のガッツとグリフィス、『東京リベンジャーズ』のマイキーと一虎、『コードギアス 反逆のルルーシュ』のルルーシュとスザクなど……それぞれの関係性に切なく胸を締め付けられた人にも、『トランスフォーマー/ONE』は大プッシュでおすすめできるというわけです。

ちなみに、本作のコンセプトとして掲げられたのは、「映画『スタンド・バイ・ミー』を『トランスフォーマー』シリーズでやろう」だったそうです。確かに「少年期」の友達との関係を思い出す、愛おしさと切なさの両方をたっぷりと感じさせる心理描写や、「列車」が登場するシーンなどに『スタンド・バイ・ミー』らしさを感じさせました。

2:戦争の本質を突きつける物語

さらに重要なのは、その2人の関係性が単なるファンサービスだけに終わっていないことです。ネタバレになるので詳細は秘密にしておきますが、劇中で明かされる秘密と、それから巻き起こる愛憎劇と周囲の状況は、現実にも間違いなくある「戦争(争いごと)の本質」を示していました
トランスフォーマーONE
(C) 2024 PARAMOUNT ANIMATION. A DIVISION OF PARAMOUNT PICTURES HASBRO. TRANSFORMERS AND ALL RELATED CHARACTERS ARE TRADEMARKS OF HASBRO.
大人向けにも思えるテーマを掲げながらも、子どもがしっかり楽しめる冒険物語が貫かれていることも秀逸です。謎のSOSのメッセージを受け取り、さらに2人のロボットを加えた4人組で冒険に旅立ち、そこで陰謀を知り、脅威に立ち向かうというという物語の流れは「王道」ともいえるのですから。

そこからの2人(+2人で合計4人)の関係性が生きてくる展開と、「その先」の物語は、メッセージ性の強い物語として「最新」と思えましたし、大人こそが感銘を受けることでしょう。

また、脚本を読んだジョシュ・クーリー監督は、キャラクターが「巨人で神話的」であることもあって、聖書の「カインとアベル」を連想したのだそう。さらにインスピレーションを受けたのは『ベン・ハー』『スパルタカス』『十戒』『アラビアのロレンス』だったのだとか。子ども向けという範囲にとどまらない、そうした往年の大作映画の見応えを期待してみてもいいでしょう。

さらにジョシュ・クーリー監督は、自身の弟をとても愛しており、驚くほど似ているように見えた幼少期を経て、それでも全く違う道を歩んできたことを顧み、「私たちは同じものを愛して育った」と思ったこともあったそうです。監督の弟への思いが、今回の『トランスフォーマー/ONE』における主人公2人の関係性にも深く結びついたのでしょう。

3:これまでの実写映画もあったからこそ生まれた作品

映画『トランスフォーマー』シリーズを簡単におさらいしておきます。もともとは変形型ロボットのおもちゃとしても有名ですが、多くの人が知っているのはこれまで7作品が展開した、2007年からの実写映画版でしょう。

実写映画シリーズの5作目までの監督を務めたのは、「ハリウッドの破壊王」の異名を持つマイケル・ベイ。世界中で大ヒットしましたが、そのド派手な見せ場のモリモリ具合はシリーズを追うごとにエスカレートし、良くも悪くも「長い」「疲れる」「胃もたれする」などと評され、時には過剰な大盛りでおなじみの「ラーメン二郎」に例えられることもありました。

一方で、その後の2018年公開のスピンオフ作品『バンブルビー』は、アニメ映画『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』でも絶賛を浴びたトラヴィス・ナイトが監督を務め、これまでのシリーズとは打って変わって少女との交流を描くドラマが高い評価を得ました。

さらには、2023年の『トランスフォーマー/ビースト覚醒』は、人間との交流を描くドラマ面と、従来の実写映画シリーズによるアクションのはちゃめちゃぶり、その両方の「いいとこ取り」ともいえる内容でした。

そして、今回の『トランスフォーマー/ONE』は実写ではない、フルCGのアニメ映画。シリーズの劇場用アニメは1986年の『トランスフォーマー ザ・ムービー』以来、なんと38年ぶりとなります。他にもシリーズではテレビアニメ作品も多く展開しています。

ある意味では、実写映画シリーズの流れをいったんリセットし、過去にも高い人気を得たアニメへと、思い切った「仕切り直し」がされているともいえるでしょう。

今回は「人間のパートナーが出てこない」こともあって、実写映画シリーズを追ってきた人は初めこそ少しとっつきづらさも覚えるかもしれませんが、今回からでもロボットのキャラクターそれぞれの魅力はすぐに分かるはずです。

なお、『トランスフォーマー/ONE』の製作に勢いがつき始めたのは、人気キャラクターが地球に到着するまでの軌跡を描いた『バンブルビー』がファンからも批評家からも大絶賛を浴び、スタッフたちが「違う種類の映画でもうまくいきそう」な可能性を強く感じたからなのだそう。これまでの実写映画があったからこそ生まれた作品ともいえるのです。

それでいて、今回の『トランスフォーマー/ONE』の戦闘描写のド迫力ぶりは実写映画にも引けをとりません。序盤の「レース」シーンは「つかみ」としても秀逸ですし、クライマックスではそれをはるかに上回るスペクタクルもあるのですから。

歴代シリーズで積み立てたノウハウと実績を生かした最高傑作といえるでしょう。
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