線路に敷かれている「砂利」には何の意味がある? どこから持ってきているの?【鉄道の専門家が回答】

電車に乗っていたり、線路沿いを歩いていると目にする、線路に敷かれた砂利。なぜ敷かれているのかはご存じだろうか。その理由を「All About」鉄道ガイドの野田隆が解説する。

電車に乗っていると、線路に砂利が敷かれているのを目にするだろう。実はこの「砂利」には大切な役割があるのだが、ご存じでない人もいるのではないだろうか。

「All About」鉄道ガイドの野田隆が解説する。

(今回の質問)
線路に敷かれている砂利には何の意味があるんですか?

(回答)
2つ理由がある。1つは、枕木が移動したり沈んだりするのを防ぐため。もう1つは、クッションとなって騒音や振動を吸収する効果があるためだ。

線路に砂利が敷いてあるワケ

線路の砂利は「バラスト」と呼ばれる
線路の砂利は「バラスト」と呼ばれる
線路に敷いてある砂利のことを「バラスト」と呼ぶ。バラストは、レールや枕木を介してかかる荷重を分散し、振動を吸収して枕木の移動(ずれ)や沈み込みを少なくする効果がある。また、雨水の排水が容易なため、雑草が育つのを防ぐ役割も。さらに、砂利と砂利の間にある隙間がクッションとなり、騒音や振動を吸収してくれる。

もっとも、時間が経過すると砂利同士の隙間が詰まり、クッション効果は下がってしまう。また、枕木のずれも生じるので、定期的なメンテナンスも必要。終電後に、機械で砂利をかき混ぜて隙間をつくったり、枕木のずれを修正したりしなくてはならない場合もある。このように面倒な点もあるのだが、費用が安いこと、災害時などの復旧作業もしやすいことなどから、広く使われている。
スラブ軌道
北陸新幹線のスラブ軌道
一方で、新幹線などの高速鉄道や地下鉄ではスラブ軌道と呼ばれるコンクリートにレールを固定する道床が普及している。また地下鉄では、地下での作業の面倒さや沿線への騒音は気にならないことからバラスト軌道は少ない。しかし、新幹線の一部では、騒音が抑えられること、復旧作業が面倒ではないこともあって、今なおバラストも併用されている。

バラストはどこからやってくる?

西金駅
JR水郡線の西金駅に併設された採石場。ホキ800形が使われていた時代の写真
バラストに使われる砂利は、全国各地の採石場から専用車両で運ばれる。その1つが茨城県を走るJR水郡線の西金(さいがね)駅に併設された採石場だ。

バラスト用砕石はすり減りに強いものが適しており、西金付近のものは2億年ほど前に海底に堆積した砂が熱や圧力の作用などによって硬く緻密に固まったものが用途にぴったりだと言われている。西金駅から専用列車で運搬され、常磐線など茨城県内の路線および千葉県内の各路線で使われている。

長い間、バラストの運搬にはホキ800形を機関車でけん引して運んでいたが、車両の老朽化や、機関車けん引列車であると進行方向を変えるときに機関車の付け替えなど手間がかかるということから、機関車不要の気動車タイプの新型車両GV-E196形が2024年4月にデビューしたばかりだ。
この記事の筆者:野田隆
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。近著に『シニア鉄道旅の魅力』『にっぽんの鉄道150年』(共に平凡社新書)がある。
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