サメ映画は1975年の『ジョーズ』の大ヒット以降にたくさん作られたものの、1999年の『ディープ・ブルー』、 2016年の『ロスト・バケーション』など、名作とされる作品はごくわずか。サメ映画はモンスターパニック映画の定番的な存在でありながらも、「サメは基本海にしか出てこない」という制約もあるためか、面白い内容になるハードルが意外と高いジャンルでもあるのでしょう。
他にもサメが竜巻に巻き込まれて飛んできたり、頭が6つにまでに増えたり、砂浜や家の中にまで出てきたりと、トンデモな設定のサメ映画もそれはそれで好事家から愛されていますが、万人にすすめられるかといえば、そうでもないというのも正直なところです。
しかしながら、この2024年夏は心から面白いと思える、幅広い層におすすめできるサメ映画が豊作! 配信中&劇場公開中(これから上映される)4作品を一挙に紹介しましょう。
1:『セーヌ川の水面の下に』(Netflixで配信中)
現在開催中のパリ五輪でも話題のセーヌ川に、巨大かつ進化したサメがやってくるという、大変分かりやすい設定のサメ映画です。しかしながら、基本的な物語の流れは「王道」かつ「真面目」といえるもの。何しろ、人間による海の環境破壊への痛烈な批判を根底に据えつつ、専門家が危険性を訴えるものの市長が無理に計画を進める『ジョーズ』を踏襲した作劇もなされているのですから。
さらに、淡水でも生きられるどころか、その先に尋常ではない進化を遂げるサメの来襲もちゃんと怖いものとして描かれています。R18+指定のアクション映画『FARANG/ファラン』も手掛けたザヴィエ・ジャン監督らしく、サメが襲いかかる場面のケレン味も効いていて、残酷描写もなかなかにショッキング。さらなる衝撃はラストシーンで、その意外性には多くの称賛の言葉が集まりました。
なお、Netflix映画『シティーハンター』で主演を務めた鈴木亮平は、同作が1650万ビューを超える大ヒットとなるも、この『セーヌ川の水面の下に』が9090万ビューとさらに大記録になったニュースに対し、X(旧Twitter)に「本当にありがとうございます。『シティーハンター』を愛してくださった皆様のおかげです。 それにしても……サメ……強すぎる……」と投稿。SNS上で話題を呼びました。 サメ映画の世界的人気を改めて証明した、記念碑的な作品でしょう。
2:『温泉シャーク』(7月5日より劇場公開中)
こちらはなんと日本製のサメ映画! タイトル通り「温泉にサメが出る」という設定からして出オチにしにか思えないところですが、一応はその理屈を通しつつ、最大限にエンターテインメントに昇華して、後半からは良い意味で「何を見せられているんだ……」と思うばかりの意外な展開をたっぷり用意する、作り手のサービス精神を大放出させた、なかなかあなどれない作品に仕上がっていました。
絵面は「低予算ですが何か?」と開き直っているかのようにチープですが、その印象をも上回る派手な見せ場もありますし、慣れればとっても楽しくなってきます。ツッコミどころも満載な上、ゴリ押しで話を進めているような場面もありますが、それでも重要な伏線は回収していたりもします。皮肉っぽい警察署長、軽薄そうに見える市長、謎が多すぎる「マッチョ」など、クセの強いキャラクターがちゃんと魅力的に思えてくれるのも美点でしょう。
血が出る場面はあるものの、過度な残酷描写は避けられていてG(全年齢)指定であり、お子さんにもおすすめできる(?)サメ映画というのも貴重です。また、サメのエサになるのがいわゆる“ウェイ系”、かつ迷惑系インフルエンサーであり、いかにサメに食いちぎられようが同情せずに見られる(?)のも良かったです。公開から1カ月以上がたち上映劇場と回数は少なくなっていますが、スクリーンで見てこその体験が間違いなくあるので、ぜひ優先的に駆けつけてほしいです。