3:『密輸 1970』(7月12日より劇場公開中)
舞台は1970年代半ばの韓国の漁村。化学工場の廃棄物で海が汚染され、地元の海女チームが失職の危機に直面したため、海底から密輸品を引き上げる仕事を請け負うことになる物語です。その後は巨額の金塊を巡ってだまし合いのバトルに発展する、実話に着想を得た作品ながら、フィクションとして遠慮なくエンターテインメント性を高めた内容に仕上がっていました。
もちろん海人さんたちがやっていることは犯罪そのもの、褒められたものではないのですが、根底には環境汚染という問題もあり、敵となる男性たちがいわゆるミソジニーに満ちていて憎たらしいこともあって、女性たちがそのひどい状況でも連帯し、一矢を報いよう奮闘する姿を応援できるでしょう。いわゆる「シスターフッドもの」として秀逸な内容なのです。
中盤の『オーシャンズ11』的な編集で敵をだます様をテンポよく見せ、さらに後半からはいい意味で「なんの映画を見に来たんだっけ?」とさえ思う、バラエティ豊かなアクションのつるべ打ち! しっかり伏線を張っていたサメが大活躍するサメ映画としても、見どころ満載な作品に仕上がっていました。こちらも上映開始から時間が経ち上映回数および劇場が少なくなっていますが、とことん「面白い」映画を求める人に推薦します。
4:『エア・ロック 海底緊急避難所』(8月16日より劇場公開)
こちらは、「飛行機が海に落ちたらそこにサメがいる」というアイデアからして奇抜な、「航空パニックもの」「密室サスペンス」「サメ映画」を一挙に味わえるお得な内容! それでいて個々の場面のクオリティは高く、特に物語の発端となる飛行機のトラブルは迫力満点かつ心からの恐怖を呼び起こすもので、トラウマになった人多数のホラー映画『ファイナル・デスティネーション』の序盤をほうふつとさせるほどでした。 飛行機が海に落ちた後、密室となったその場所で生き残ったのはわずか7人。酸素はごくわずかでタイムリミットが迫るハラハラもありますし、脱出するためのアイデアも「なるほど、だから飛行機を沈めたんだ!」と感心しました。いい意味で絵に描いたような「後ろ! 後ろ!」なサスペンスや、名作『ポセイドン・アドベンチャー』を連想させる展開もハラハラできるでしょう。 人物描写もスマートで、女子大生とその男友達、大好きなおじいちゃん、おばあちゃんと旅行に来ていた10歳の少女など、すぐに登場人物の特徴を覚えられますし、冒頭でそれぞれの「らしさ」を示すのも上手なところです。さらに、同性パートナーとの結婚を夢見るキャビンアテンダントに対し、男友達が軽薄なジョーク、いや侮蔑的な言葉を投げかけたことが、その後のドラマにしっかり生かされていたことに感動しました。 LGBTQ+への向き合い方としても、反面教師的にはっきり良くないことを示しつつ、その後は「互いに少しだけも歩み寄れるかもしれない」コミュニケーションの一例を示すという、誠実かつ最新系のアプローチをしたサメ映画として、心から称賛したいのです。
コアなファンを持つ『ザ・グリード』がレンタル配信スタート!
サメ映画ではありませんが、直近で話題になってるのは、『ザ・グリード』がDMM TVやビデオマーケットで、レンタル配信スタートとなったこと。同作のDVDは廃盤で、これまで日本の配信サービスでは見られなかったこともあり、2023年の『午後のロードショー』(テレビ東京系)の地上波放送でもちょっとしたお祭り騒ぎになっていたりもしたのです。同作は、アメリカで同じく豪華客船を舞台にした1997年の歴史的大ヒット作『タイタニック』の1カ月後に公開されたこともあり興行的には大失敗してしまったのですが、B級(ただしお金はかかっている)モンスターパニック映画の名作として多数のファンに愛されています。グロテスクなシーンもありますが、とにかく「面白い!」と思える娯楽作や、「水」と人間を食べる存在を掛け合わせた恐怖という、サメ映画的な要素も求める人に推薦したいです。
かわいいサメのアニメ映画が公開決定!
今後に公開されるサメ映画で注目なのは、何といっても発表されたばかりの『おでかけ子ザメ』でしょう! 同名漫画を原作としたYouTube配信のアニメが大人気となり、その1周年を迎えたタイミングで映画化決定の特報映像が公開されたのです。「世界一平和で幸せなサメ映画の爆誕だ」「アニメロスで2期まで耐え忍んでいたら、まさかの映画化発表で待ちきれなさが限界突破した」など、うれしそうなコメントが早速投稿されています。
まさにその通り、おおむねで人間を襲う恐怖の存在として描かれていたサメが、この映画版『おでかけ子ザメ』ではひたすらにかわいい癒しの存在で描かれることはほぼ決定しているのです。新時代のサメ映画として、大いに期待しています。
この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。